第5話 「アタシのリュックには100を超える便利道具が入っているんだぜ!」「……禄に使っている用に見えないのは秘密兵器ってことですかね」
「非常口って入り口じゃあないんですよ?数百年前の施設なんて危険なわりにゴミの山ですよ。止めましょうよ」
「そんなに慌てんなって危なそうなら入らないし。あと、知ってることをごまかすのはもうなしだからな?」
さっきからこればかりだな。普段の余裕そうな態度は何処へやら、もう露骨に止めてくる。
いつもそんな感じならわかりやすいんだが。
基地からさらも北に向かうこと30分程度。足元は普通の灰土になり、完全に基地の敷地外である。害獣の餌になる緑が遠くに見える。ぱっと見何もない平地だがデウス曰く、ここがその非常用出口らしい。
「何処?何もなさそうだけど」
「ちょっと待ってくださいね。あ~ざんn……開くのかよ。セキュリティ意識糞だな。これだからナルモは」
デウスがウニャウニャ言ってると地面がずれて、地下への人一人通れるかどうかの階段が現れた。全く気が付かなかったが、分厚い金属の地下扉の上に分厚い灰土が乗っていたらしい。
「おお!どうやったのこれ?」
「本来開かないんですけどね。外部電源で外から開けられる仕組みにしてるのはナルモの悪いところで、僕の手柄ではありません」
なるほど?よくわからんことがデウスくらいにしか出来そうにないことはわかった。
とにかくこの階段を降りればいいわけだ。
「よし、行こう!」
「行きませんよ。そもそも数百年単位で人が入っていないところですよ?警備システムとは別に、崩落とかガスとか色々危ないんですよ」
「やばいと思ったら止まるさ。ガスチェックはするし、警備システムも様子を見る。まずは調べてみないとな」
アタシのでかいリュックは伊達ではない。当然そういった装備も入っている。……はず。随分前に入れた覚えはある。どこだったかな?
「あーちょっと待ってください。……電源は落ちてる。空気の組成、細菌、ウイルス……okですね。クリーンに使っていた様です」
「ん?」
「貴方を止めるのは無駄っぽいので、ドローン飛ばしました。僕が先を行きますのでとりあえず付いてきてください。何かあったら真っ先に逃げてくださいね」
とりあえず入っていきなり死ぬようなことはないってことか。
デウス謹製の明かり付きドローンに先行してもらい、後から階段を降りることしばし、特になにも起きることなく、階段が終わって金属製の扉が現れる。
「ん、これは物理鍵ですね。工具とか持ってます?」
「やっとアタシの出番か」
手足をぶらつかせて、血の巡りを良くする。
人間の力を見せてやる!
「いや、何しようとしてるかはもうわかりますけど、そのリュックに工具とか無いんですか?人間は道具を使ってこそでしょう?」
「要は扉をぶっ壊すんだろ?残念ながらそんな物騒なものは入っていない。というかこのくらいならいらないだろ」
地下を見つけたのはデウスで、アタシは今のところいいとこなし。おんぶに抱っこというやつだ。これはいけない。
ハンターなのはアタシで、地下のお宝に用があるのもアタシだ。デウスは手伝ってくれているが、なんでもやってもらって喜ぶのは子供だ。大人のアタシは流石にそろそろかっこいいところ見せないとプライドがやばい。
アタシのブーツは特別製。硬質プラスチックで作られていて重く、硬い。これ履いていれば、銃を落とそうが、車に引かれようが足は大丈夫な逸品だ。
扉はノックした感じではそんなに厚くない。電磁ロックが掛かっているだけの普通の扉に見える。ガッチリはめられているわけでも、シャッターってわけでもない。歪めば外れる作りだ。
だったらやることは単純。大事なのはイメージだ。
思い切り蹴って扉を外す。アタシにだってそれくらいはできる。
狙いはど真ん中。旧世界の基地の扉。なんだからわからない金属で出来ていて随分と硬そうだ。でも、壊す。アタシが殴れば大抵のものは歪むし、アタシが蹴れば何だって壊れる。割れる。これは、これだけは自信がある。
「ぶっ壊してやる」
思うだけじゃなく宣言する。こういうのは大事だ。これで関係性が明確になった。関係が明確なら意識も変わる。この扉はアタシの敵だ。
さっきまではただの扉だったが、今は見てるだけでムカつく。
息を吸って。吐く。肺に入れた空気が腰から太もも、つま先にいたるまで足に血が通うのを感じる。
「よッと」
左足を軸に、腰を小さく回して、膝を上げ、蹴るというよりは踏むような動きで右足の踵を扉に叩きつける。
僅かな抵抗の後に、確かな足ごたえ。扉はひしゃげて外れ、甲高い音を立てて基地の内部に飛んでいった。
「ちょっと強かったか」
イメージとちょっとズレた。思ったよりは固くなかったな。まあ、入れるようになればなんでもいいや。
「できちゃうんですねえ。そういうことが出来ないように金属で作られていると思うんですけど……」
「けーねん劣化ってやつだろ」
「いや、セルメタルですよこの扉。サイバネなしでこんなこと出来るのは流石と言っておきましょう」
体動かすの得意だからハンターになったんだし、これくらいは出来ないとな。
アタシが開けた扉から侵入したが内部は真っ暗。
音の響きからして部屋というより空洞みたいだけど返ってくる音が遠い。
デウスに聞いたところ、ナルモ基地の地下は地上部と同じくらい広いらしい。
「暗いなあ」
デウスがドローンで照らしてくれる前方以外真っ暗だ。明かりが全く足らない。
見えないってのは、思ったより気を使うな。スタスタと足に淀みなく先導するデウスの後をついていく。
「今何処向かってんの?てか、見えてんの?」
「僕のセンサーは光学だけじゃないので暗さはあまり影響しません。向かってる先は制御室ですね。何をするにもここを抑えて置けば安心です」
ロボすげえなあ。
「何百年も前の基地だろ?まさか動かせるのか?」
「見てみないとなんとも言えませんね。死んでるか生きてるかを確かめるためというのもあります」
なるほど?ロボはすげえな。今日何回目だこれ。
先導していたデウスが扉の前で止まる。他の扉と大差ないように見えるが、ここがコントロールルームなのだろう。
「お、開けるか?」
ぶっ壊すか?
「いえ、電磁ロックなので穏便に行きましょう。開きました」
残念。
部屋に入ると暗いが、結構広さのある部屋だ。何人も座れそうな椅子と机があり、壁はドローンからの光を反射するような光沢がある。ディスプレイかな?
「……当然のように地軸電池とナイーブメタルですね。全く。この基地動きますよ」
「まじかよすげえな」
「ポジティブな捉え方をすると旧世界の技術は持続性に優れてますね。動かします?」
いやすごいのはお前だと思うが、
多分都市のハンターで同じことできるやつ居ないぜ?
「頼むわ。暗いし、電気とかつく?」
「はい。
「良かったですね。まだ利用価値が認められました。おはようございます」
デウスが屈んで床に振れると、眠りから覚めたように基地内の明かりがつく。
一瞬だけ目が眩むが、明るさに慣れた目に写る部屋は数百年前の施設というのが信じられないくらいにきれいだった。ホコリ一つない机に、床に固定され整列された椅子、壁のディスプレイも電源が入ったのか何やら文字が映し出される。その光景はなんというか都市の中みたいで、文字は読めないけど、ゴモラよりはずっとこの基地は身近に感じた。
壁一面のディスプレイには基地全体を横から見た地図が表示され、地上部が赤くなっていた。アタシたちの居るところは地下一階で、地下二階は地下一階の端から降りる事ができるようだ。
「これでこの基地は貴女のものです。どうします?」
「とりあえずいろいろ漁ってみようぜ!」
お宝があるといいな!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます