1-3「PGO」
そこには、物体のいた方向にまっすぐ手を伸ばしている青いジャケットの女がいた。女は佑心を見つけると、ゆっくり手を下ろした。
「ゴースト、見えるの?まさかパージャー?」
「はあ?ゴースト?パージャー?何言ってるんですか?」
佑心は壁にもたれた時に服についた汚れを払いながら顔をしかめた。なんでもないというように話す女は自分と同じくらいの年に見えた。
「なるほど。PGOじゃないみたいね。ゴーストってのはさっきそこに浮かんでた青いやつで……」
「PGO……」
その女、一条が淡々と答えていると佑心が遮った。祐心の雰囲気ががらりと変わった。俯きがちで、声色が一段低く、有無を言わせぬ圧を感じさせる様子である。佑心の顔は闇をまとい、瞳は憎しみに呑まれていた。
(PGO……はっきりと覚えてる……)
佑心はある記憶を奥底から取り出した。不明瞭な画面が断片的に頭に流れこむ。うずくまって苦しんでいる母、自分を庇っている姉の叫び声、光に包まれて苦しんでいる女性。そして「PGO生活局から人を連れてこい!」と叫ぶ声。そう叫ぶ大人の男の腕に一条と同じ制服ではっきりとPGOと書かれているのが見える。
(あの時、母さんと佑稀はPGOとかいうやつらに殺されたんだ……どう調べても、何の情報も得られなかった……PGOなんて言葉はどこにも……)
祐心は鋭く一条を睨みつけた。
「お前らは……お前らは一体何なんだ!」
「PGOの何を知ってるの?」
「なんにも知らねえよ……でもいたんだよ……俺が家族を奪われたあの時に、お前らが!」
一人興奮する佑心に、一条は静かに聞いた。
「……亡くなったのは?」
「母さんと姉の佑稀。確かにあの時の母さんは普通じゃなかったけど、殺される理由はなかった!優稀にいたっては、なんで……」
佑心は悔しそうに自分の左腕を強く掴んだ。
「……PGOは意味もない人殺しの集団じゃない。私たちは浄化師(パージャー)統括機関、略称がPGO。あなたの家族は多分、ゴーストに憑かれた憑依体になったんだと思う」
「?」
聞きなれない単語の羅列に、佑心は眉間にしわを寄せた。
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