13-2「散開」
そのそばで心は冷静に敵の特徴を見定めた。
(接近戦ならパワーで押されるのが目に見えてる。僕はパージ能力も見えないし、身体強化もできない。だったら距離を取って撃ちこむしか……)
「銃使いのパージャー、見たことがない」
ガンが遮った。撃たれた足を気にしながらも、がんは「手早く片付ける」と言うなり、大きく跳躍して心に殴りかかった。心はすぐに銃を構えて放つ。しかしガンは空中で器用に体を捻り、弾丸を躱し、途端に心の視界から消えた。心は銃を構えつつ、焦って辺りを見回した。
(どこだ⁉どこに行った⁉はっ!)
そして突然感じた気配に上空を見上げると、ガンが頭上に迫ってきていた。間一髪で避ける。ガンの足は心がいた場所のコンクリートにめり込んだ。またすぐに接近したガンに対し、心は腰を低く落として、ガンの負傷した大腿を狙って蹴りを入れた。
「ぐっ!」
ガンは苦しみの声を上げて左膝をついた。そのすきに心は銃口を向けたが、その手がガンに掴まれた。そのままガンは心の腕を持って、砲丸投げでもするように側の建物まで心を放り投げた。心は土煙を立てて壁にめり込んだ。パージ能力による身体強化は不可能。心にとっては一度の打撃でも重い負担だった。そんな様子からガンも、心がパージャーでないことを見抜いていた。
「終わりだ」
ガンの掌に薄黄色の霧のようなパージ能力が宿された。それはだんだんと大きくなり、遂に壁に向かって発された。微動だにしない心は壁からずるりと落ちた。パージャーでもないのならさすがに死んだだろう、そう思いつつもガンは確実に仕留めるべく倒れる心へと足を進めた。しかし目の前まで来た時、ガンは目を見張ることとなった。息絶えたと思われた心が銃のマガジンの先端をガンの足に刺していた。
(まだ生きていた⁉……何をしている?)
「あいにく、ただの銃じゃないんですよ……」
心がマガジンを強く握ると、そこから灰色の光がどっとあふれ、ガンの内部まで稲妻のような痛みが貫いた。
「ぐうわっ!」
一方、佑心はモモ全く歯が立たなかった。佑心の胴に渾身の蹴りが入り、佑心の身体は駅横のモールの屋上まで吹き飛んだ。体中の痛みを感じながら、佑心は落下の直前にパージ能力を射出した。わずかながらもそれは衝突の勢いを緩衝した。モモは優雅に着地するなり地面の瓦礫を蹴りとばした。
「弱い弱いなー。今の組織はこの程度か?モルが泣くぞ」
佑心は朦朧とする意識の中、モモから少しでも距離を取ろうと屋上のへりまで這った。
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