12-2「後門の狼」
高層ビルの屋上から足をぷらんと垂らし、白いマスクで顔を覆ったモモの髪が風に揺られた。その後ろには同じくマスク姿のガンが手を後ろに組んでボディーガードよろしく立っていた。
「モルから連絡が来ました。神戸でのテロへの世間の関心も薄れ、PGOの特殊執行部は年明けには捜査の手を緩めた、と」
モモの口角がぐっと上がった。
「イッハッハッハ!ならもうあっちも何も言ってこないだろ?」
モモは片手に持っていたスマホを耳元に持ってきて、楽しそうに舌なめずりした。
「GO……」
裏路地、半月のような文様のマスクをつけたモルはモモの電話を受けた。そして、左手に持っていた透明な円筒状のカプセルを見つめた。中には青白いゴーストが一体揺らいでいる。
その場でカプセルは地面に叩きつけられた。中のゴーストはゆらゆらと飛び出し、モルはふうっと息を吹きかけた。すると、ゴーストはゆらゆらと人が多く行き交う表通りにゆっくりと出ていった。
*─*─*─*
PGO諜報部内に警報が鳴り響き、職員がせわしなく動き回る。
「はい、諜報部です!」
諜報部職員は電話を取って焦った表情を浮かべた。
「憑依体ですか⁉了解しました!」
勢いよく受話器を置いて職員全体に叫んだ。
「相模原署から憑依体出現の報告あり!すぐにパージャーの要請を!」
すると、他のデスクからも声が上がった。
「川口署から憑依体出現の報告あり!」
「え⁉」
また他のデスクが騒ぎ出した。
「千葉署からも報告あり!」
「何っ⁉」
「急いでパージャーを派遣しろ!」
しかし騒ぎはそこで止まなかった。
「何⁉ほぼ同時に各地で廃ビルの爆破騒ぎだと⁉」
「どれも使われていない建造物で、被害者は少ないと思われますが……」
「しかしそれは警察に任せておけば――」
「ダメだ!憑依体出現と同時というのが気にかかる!避難誘導のためにも、PGOから人を出せ!」
「は、はい!」
PGO本部全体にけたたましいサイレンが鳴り響き、一階メインホールには大勢のパージャーが集まりって次々と地上へ上がっていった。エレベーターで上がっていくものもいるが、多くは地上まで続く出口からパージ能力によって上昇していった。
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