握手




 『もっるい』会社。

 医薬品原料、健康補助食品、食用油脂、タンパク質、魔法製品原料、乗物の燃料。

 藻類の可能性を形にして世に商品として流通させた、この会社の創設者であり、藻類産業の先駆者であり、また最も稼いでいる会社、及び社長十位圏内に常に名を残している。


「はああ。俺ってすごいんだなあ」

「ううむ。天は二物を与えるというが。魔法使いとしても、社会人としても、そんなに成功しているとは。与え過ぎではないかのう」

「つまり、俺はすごすぎて、魔法の世界からも、経済の世界からも、嫉妬を買いまくった結果、呪いを受けたわけか。は。呪いをかけたいなら、俺に直接かければいいものを」

「よもや、少年を介在して、呪いがかけられたのか?」

「俺を狙ったのか、善嗣よしじを狙ったのか。まだわからないけどね」

「おまえを襲った三体のゴーレムを操っている輩の名前は、周空ちから。莫大な金さえもらえば誰でも殺害する暗殺者じゃ。悪の帝王に憧れて、悪の帝王の紋章であり、植物界で強力な毒を持つトリカブトをゴーレムに彫っていると噂されていたが、成功しても失敗してもゴーレムはすぐに土に還るので、真実かどうかはわからなかった。しかし、今回、ゴーレムをほぼ五体満足で回収する事に成功して、噂が真実だとわかった」


 呂々爺ろろやは一度口を閉ざしてのち、言った。


 おまえたちを狙っているのは、現時点では誰かわからない。と。


周空ちからは依頼を受けて殺害しようとした。一度失敗したら、手を引くか、また依頼者から金を積まれれば殺害しようとするじゃろうが。現時点で、周空ちからに依頼した人物はさっぱりわからん。おまえを狙う者は多そうだしのう」

「匙を投げる?」

「だーれが投げるかい。わしがこれより四六時中おまえたちにひっついて、必ず周空ちからも、依頼人も逮捕するわい!」

「お願いします!ええっと。今更ですが、お名前は何ですか?」

呂々爺ろろやじゃ」

「俺は日埜恵ひのえ。よろしくお願いします」

「うむ」


 日埜恵ひのえ呂々爺ろろやは同時に立ち上がると、熱い握手を交わすのであった。











(2024.6.11)



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