白光
「面倒事は持ち込まないってのが宿泊の条件だったはずだがね」
「記憶喪失に免じて勘弁してくれ。あと。ほら。『
閉店を迎えて静まり返る朝月夜の事である。
『
ヘルメットは被ったままである。
「じゃあ仕方がないねえ」
「そうそう仕方がない」
「って、ゆるすと思うかい?」
「思う」
「宿泊料金及び飲食代二倍寄こしな」
「二倍でいいの?いや~よかったよかった。俺って社長だったからさ。あ。覚えてないけど。社長だったみたいだからさ。金はいっぱいあるし」
「また同じ事があったら全財産むしり取るよ」
「へえ。条件を破ったのに泊めてくれるんだ?」
「あんな幼い子を回復させないままこんな平原に放り出せないからね。まだ眠ってるんだろ」
「ああ。ぐっすり」
「起きたら一階に連れてきな。ご飯を食べさせる。そして、今日も泊まって行きな。あの子を回復させないと、旅は無理だろ」
「優しい店主に出逢えてよかったわ~」
「チップを弾んでくれていいよ。社長さん」
「
「っふ。まあ、それでいいよ。あんたも疲れただろ。眠りな」
「こいつらどうすればいい?」
「私が自衛組に連絡しておくよ。そのままにしておくと客の邪魔だからね」
「頼むわ」
店の中に入って行く
地面に伏せっている三人の人間を。
否、人間と呼んでいいものなのだろうか。
人間を
あちらこちらと身体の欠けている箇所から流れ落ちてきているのだ。
真っ赤な血ではなく、灰色の土が。
(どうしても俺を。か。
就寝して二時間くらい経っただろうか。
誰かに耳元で囁かれたかと思えば、一気に意識が覚醒。
その囁き声に導かれるまま地下から一階に上がり、店を通り過ぎては外へと出た先に、にょきにょきと踊り狂うように地面から三人の人間が生えて来たかと思えば、一斉に襲ってきたのである。
どうやって倒したのかは不明。
己を中心として円形に眩い白光が放出されたかと思えば、三人の人間は地面に伏せっていたのである。
(早く俺を知っている人間を探した方がいい。か)
(2024.6.10)
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