第45話 近づく脅威

 村の危機を救った俺たちは、その後も快進撃を続けていった。

 ミレイン、メルファ、トーラ――三人の実力はもう並大抵のダンジョンでは満足できないほどにまで達している。

 それでいて慢心はなく、さらに上を目指そうという向上心に溢れていた。

 

 日に日に成長していく弟子を眺めているのは楽しいが、最近は少々不安な面もある。

 

 きっかけはダンジョン攻略を終えた後、宿屋で三人が寝ている間にふらっと立ち寄った酒屋で聞いた話だった。


「あんたか。最近噂の女連れ冒険者っていうのは」


 カウンターで酒を飲んでいると、同業者と思われる男が絡んできた。


「彼女たちは俺の弟子だよ」

「弟子ぃ? てっきり親子かと思っていたが、まさか弟子とはねぇ」

「いけないか?」

「そういうわけじゃねぇさ。本音を言わせてもらえば羨ましい――が、最近は女を連れている冒険者を標的にする悪党もいるらしいから気をつけろよ」

「……その話、もう少し詳しく教えてくれないか?」


 女連れの冒険者を襲うヤツがいる。

 最初は悪趣味だなぁという感想しか抱かなかったが、ふと脳裏にアルゴの表情が浮かびあがってくる。


「まさかな……」

「なんだよ、心当たりがあるのか? だったら本当に気をつけた方がいいぜ? ヤツらすぐ近くの町に滞在しているようだからな」

「っ!?」


 まさか、俺たちの居場所がバレた?

 もしかしたら、この前感じたあの気配……俺たちを捜し回っているアルゴのものだったかもしれない。


「いろいろと忠告と情報をありがとう」

「いいってことよ」


 男は店主に金を払うと、そのまま店を出ていった。


 ……そうか。


 アルゴたちはすぐそこまで迫っているのか。

 救世主パーティーとしての資格を失いながらも執拗に追いかけ回してくる様子を見る限り、話し合いでの解決は難しそうだな。


 かといって、こちらから戦闘を仕掛けるというのもな。

 どう対処するのが正解か……いや、かかわりを持つだけで不正解な気がする。


「さて……どうしたものかな」


 再びひとりになったところで、俺は今後の展開を考える。

 できれば、あの子たちに何も影響がない状態をキープしたい。


 となると……俺にできることはひとつしかないな。

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