第36話 戦友の現状
温泉からあがると、一旦部屋に戻る。
ミレインにアランのことを教えると、「是非会いたいです!」ということで一緒に夕食を取ることにした。
「じゃあ、アランさんは今ソロで活動されているんですか?」
「ああ。俺ももう年でな。若い連中のように活気もなくなって、今じゃのんびり採集クエストをこなす日々さ」
アランは穏やかな目で語る。
かつては【剛腕のアラン】と呼ばれ、数々のダンジョンで多くの武勇伝を残してきたが、寄る年波には勝てず、最近では足手まといにしかならないとパーティーへ所属することを避けていた。
そんな彼に、俺やミレインは自分たちのパーティーへ入らないかと誘った。
トーラやメルファも懐いているようだし、ベテランが増えるのは心強い。
だが、彼は首を横へと振った。
「誘いはありがたいが、今の俺はペースもかなりのんびりでな」
そう言って断ったアランだが、俺はその際の彼の仕草に違和感を覚えた。
「アラン、おまえ……もしかして腕が……」
「おっと、気づかれちまったか」
「えっ? どういうことですか?」
苦笑いを浮かべるアランに対し、状況がよく呑み込めていないミレインは動揺する。
そんな彼女の様子を見かねたアランは自ら説明を始めた。
「数年前にダンジョンで大怪我を負っちまってな。左腕はあんまり言うことをきかねぇんだ」
「そ、そんな……」
ミレインは【剛腕】と呼ばれていた頃のアランをよく知っているから、今の彼の状況が信じられないといった様子だった――が、冒険者にこの手の話はつきものだ。
ダンジョンには手強いモンスターがたくさんいる。
今のところは順調だが、いつどこでどんなモンスターと戦闘になるか分からない。
みんなには努々油断しないよう言っておかないとな。
「だが、今日は本当に楽しいよ。おまえたちが元気でいてくれたからな」
「私たちはそう簡単にはやられませんよ」
「はっはっはっ! そうだな! これからもしっかりやれよ!」
「はい!」
豪快に笑い飛ばすアランの姿を見て、俺は安堵する。
そういえば、あいつはこれくらい大きな声で笑うんだったな。
温泉に入って話をしている時は気づかなかったけど、あの頃に比べたらだいぶ大人しくなんっている印象だ。
それはきっと、彼にとっても思うところはあったのだろう。
しかし、俺たちとの再会で気持ちが吹っ切れたようだ。
「よっしゃ! 今日はトコトン飲むぞ!」
「それはいいが、子どもたちはそろそろお眠の時間だ。続きは彼女たちを寝かしつけてから聞くよ」
そう言って、俺は爆睡しかけているメルファとトーラを担ぎ上げる。
やれやれ、こういうところはまだまだ子どもだな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます