第11話

「何、言ってるの……あなたはただ……」

「私ね、気づいたんだ。人が死んじゃうっていうのは心臓が止まるってことだけど、それが死んじゃうってことじゃないんだって。」

「……」顔を伏せるお姉ちゃん。きっと、叫びたくて、泣きだしたいのを我慢してる。そんな姿を私はしっかりと見て、話を続ける。

「死んじゃったら姿は見えなくなる。声は聞こえない。名前を呼んでも返事は返って来ない。でもね、きっとそれはまだ死んじゃったってことにはならないと思う。本当に人が死んじゃったってなるのは、誰からも忘れられた時。誰の記憶にも記録にもいなくなってしまった時。その時が来るまでは私も、死んだことにはならないんじゃないかなって」

「……」

「だから、覚えていてね?ずっと、私のこと。お姉ちゃんには、妹の私がいたって。お姉ちゃんを悲しませてばかりだけど、けど、誰よりもお姉ちゃんを大事に思ってる妹がいたって」

「……勝手に」

「ん?どした…ってちょっ!!」

 気づいたら私は押し倒されていた。少しだけときめきを感じた私を神様どうか許してください。

「おねえ、ちゃん?」

「勝手に過去形にしないで!私のかわいいかわいい妹のあなたはまだ!まだじゃないこの先何十年もずっと生きているの!!」

「おね……」

「覚えていて?違うよ。覚えてなきゃいけないの!!絶対に忘れちゃいけないことなんだから!あぁもう!!」

お姉ちゃんは泣き出してしまった。私の頬にも涙が唾たる。


 強く抱きしめられる。私は身を委ねる。

お姉ちゃんの涙はまだ止まらない。

けど、いつかはずっと笑顔でいてくれるようになるって信じている。







 笑顔のあなたが一番好き、だから。

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