第3話
今置かれている状況を理解してしまうと必然と分かってしまう。
いずれ、今までの私はいなくなってしまう。みんなと同じ軌道では絶対に生きられないと。
有効的な治療法がない。ただただ恐怖に支配されながら過ごす日々を過ごしているとあっという間に季節が巡ってしまった。
通っていた高校は退学。毎年楽しみにしていた誕生日も1人病室で迎えた。
しばらく入院って……しばらくどころの話じゃないじゃん……。誰かを責めたくても責められない。
※ ※ ※
ある日のこと。許可を得て、私は病室を出て病院の屋上に向かっていた。今は酸素マスクもいらない。集中治療室から病棟に戻れるくらい、安定していた。
屋上には先客がいた。その先客は私を驚いた顔をして見ると、話しかけてきた。
「あれ……あなた、名前は?」
「えっと……翠です。」
「いくつ?」
「16です。」
「いつからいるの?ここに」
「前の季節から……」
「そう。」
「えっと……あなたは一体?」
「そっか。名乗ってなかったよね。私は黒澤華。今日は……さっき小学校からの付き合いの大切な友人を……看取った。」
「……」
「さっき驚いた顔をしてしまったけど、実はその子とあなたがあまりにもそっくりだったから……」
生き返ったのかと思った。か。華さんが言おうとしたことが分かった。
「ねぇ、翠ちゃん」
「……はい」
「あなたは今どの階の病室にいるの?」
「えっと……」
私から階を聞くと華さんはお願いをしてきた。
「翠ちゃん、迷惑じゃなかったら、お見舞いに来てもいいかな?もっと翠ちゃんのこと、知りたいから……」
「いいですよ。お待ちしてますね」
私がそう言うと、華さんは軽く頷いて帰って行った。
不思議な出会い、だなぁ。
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