年齢不詳。

崔 梨遙(再)

1話完結:1800字

 僕がまだ20代の後半の時。前作『親子』で出て来た知人とは別の知人から、


「女の娘(こ)を紹介したるわ」


と、言われた。相手はまた保険の外交員。その知人は、


「美人でもないし、かわいくもないで」


と、前もって情報はくれた。


「太ってる?」

「それはない」


僕は紹介してもらうことに決めた。


 そして、紹介された。うん、確かに美人じゃない。かわいくもない。太ってもいない。嘘はついていない。だが、また50代だった。名前は美鈴というらしい。


「お幾つですか?」

「40歳やで」


 また、嘘をつかれた。なんで、スグにバレる嘘をつくのだろうか? まあ、今回は知人が正直に紹介の理由を話してくれていた。保険屋の若くて綺麗な外交員さんを口説いたら、この50代のオバサンのことを頼むと言われたらしい。前回とほぼ同じ流れだが、今回は正直に事前に背景まで話してくれたので、よしとしよう。悪意は感じない。だが、


「じゃあ、あとはお2人で」


 と言って、スグに知人は去って行った。嫌~ん! 1人にしないで-! いや、違う、2人にしないで-!


 で、僕とオバサンは2人きりにされた。僕は映画を見に行くことにした。映画なら、喋らなくてもいいからだ。だが、映画館で手を繋がれ、、放置していたら腕を組まれた。振りほどくことも出来ず、また僕は放置した。


 映画が終わると、


「コーヒーを飲みたい」


と言われたのでカフェに入った。カフェで、娘さんの写真を見せられた。美人だった。名前は樹里というらしい。僕は娘さんに興味を抱いた。というか、こんなに大きな娘がいる時点で、絶対に40歳ではない。娘さんは26歳だという。


「娘さんを紹介してや」


 と言ったら、


「一緒にホテルに行ってくれたら紹介する」


と、交換条件を出された。究極の選択だった。


「私、スタイルええねんで。私の体を見たら絶対に気に入ると思うわ」


 その言葉に背中を押されたわけではないが、僕は樹里に会いたかった。そう言えば、知人も美鈴の娘は美人だから狙っていると言っていた。僕には、同じ様な展開から娘さんと親しくなった実績がある。今回も、いける! と思った。それに、母の躾に、“女性に恥をかかせてはいけない”というものがあった。僕は母の言葉に従う。



 ホテル、美鈴だけが盛り上がっていた。欲求不満が溜まっていたらしい。だが、美鈴は1つだけ本当のことを言っていた。美鈴はスタイルが良かったのだ。首から下はいい女だった。僕は、終始首から下しか見ないようにしていた。


「約束やで。樹里ちゃんに会わせてや」

「うん、会わせるから来週また会おうや」



 翌週、美鈴と樹里が待ち合わせ場所にやって来た。樹里は写真よりも綺麗だった。樹里をものにしたい! 僕の内に闘志が湧き上がってきた。


 カフェで3人で盛り上がる。樹里は会話をしていても楽しい! 僕は樹里と付き合う妄想が膨らんだ。樹里と付き合えたら最高だ!


 樹里が腕時計を見た。


「あ、もうこんな時間や」

「え、樹里ちゃん、どこか行くの?」

「うん、これからデートやねん。ほな、崔君、またね」


 立ち去る樹里の背中を呆然と見つめた。


「美鈴さん、樹里ちゃんとせっかく出会えたと思ったら、樹里ちゃん、彼氏がいてるやんか」

「そやで、彼氏おるよ」

「なんで? なんで言ってくれなかったの?」

「だって、崔君が娘に彼氏がいるか? って聞かなかったでしょ?」

「ほな、僕は今日、何しに来たん?」

「約束通り、ちゃんと会わせたやろ?」

「なんか、スゴく騙された気分なんやけど」


 そこで、美鈴が満面の笑顔で言った。


「崔君には、私がいるやんか」



 嗚呼! どうしよう……。



 ゴールデンウイークの最終日の朝、僕は美鈴の電話で目を覚ました。電話に出ると、今、駅で、旅行の土産をどうしても今日中に渡したいから会いに来てくれとのことだった。ゴールデン最終日は寝て過ごしたかった。断ったら、“賞味期限のあるものやから、どうしても”と言われ、観念して駅へ行った。


 駅に着くと、美鈴が両手じゃ抱えきれないくらいの土産袋を抱えていた。僕と合流したら、それら全ての土産を渡された。僕は荷物持ちとちゃうぞ! 


「ほんで、どれが僕への土産なんや?」

「あなたへのお土産は、わ・た・し」



 僕は、荷物を全てその場に置いて帰った。







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年齢不詳。 崔 梨遙(再) @sairiyousai

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