第49話 動き出した「時」
*
異変を感じ取ったのは、ハインミュラーだけではなかった。5巫女のうち4人もまた、リアンノンだけいなくなっていることを疑問に感じた。
《リアンからの返事がないわ!おかしい・・・》と、リゼティーナ。
《私から言っても返事がない》と、姉のヘレン。
《こんな大事な時に・・・といいたいけど、誰かに連れさられたとか??》と、ゼルフィーネ。
《とりあえず、黄龍の神殿に行って見ましょう!》と、セレス。
《リアンったら、まったく・・・無事ならいいけど》と、リゼティーナ。
そして、巫女服のまま、5巫女のうち4人が黄龍の神殿に向かって出会ったのは、石化したリアンノンとシルウェステルの石像にすがりついて泣くバーナードだった。
「な、何よこれ・・・」と、ヘレンが凍り付く。
「り、リアンが石に・・・!!シルウェステルさんまで!!ちょっとちょっと!!」と、ゼルフィーネ。
「石化することでシェムハザを封印しようとしたわけ・・・??」と、セレス。
と、その4巫女のもとに、ヅラを連れたハインミュラーが息を切らしてやってきたのだった。
「あら、兄さん」と、ヘレン。
「ヅラさんも」と、セレス。
ヅラ・ラ・ラスコ―ニは、あの戦いの後、スマローコフを分離させ、殺したのち、地中に逃げ込んだシェムハザの後を追って、馬で光の神殿の方向へ向かうところを、ヅラを探していたハインミュラーと出くわしたのだった。
「ヅラさん、妹が・・・!!」と、ハインミュラーが指さす。その先には、石化した二人の像があった。
「な・・・り、リアンノンちゃんが・・・!!!」と、ヅラが真っ青になる。
「アラミスさんには、すでにバーナードさんを通じて知らせてあります」と、ハインミュラーがヅラに言う。
「アラミスさんは、ここら一帯のグールを一掃したあと、すぐに神殿へ戻って来るそうです」と、ハインミュラー。
リアンノンの姉であるヘレンがしくしくと泣き出した。
「何もリアンが犠牲になることないじゃない・・・!!この石化は、永遠に解けないでしょうね、1000年もすればリアンノンの魂は石を通じて大地と同化し、本当にシェムハザを封印するための人柱になってしまうわ」と、ヘレン。
「ヅラさん、さっきも言った通りです、グレー・・・怪しいのはアテナ神なんです!!」と、ハインミュラー。
「・・・・」ヅラが、しばしの間沈黙する。
「・・許せん」と、ヅラが一人呟く。
「え??」と、ハインミュラー。ここまで怒ってるヅラを見るのは久しぶりだ。
「ハインミュラー兄上殿、あなたも元賢者でしたね。至急、そのアテナ神を呼び出して頂きたい。俺がたたっ斬る」と、ヅラが静かに言う。
「わ、わかりました、ヅラさん!といいたいんですが、俺ならたぶんできます。シルウェステルさんの方がうまいんですが」と、ハインミュラー。
彼らの作戦はこうだった。
ハインミュラーがアテナ神をなんとか誘いだし、ヅラがそれを捕らえ、尋問し、石化した二人を元に戻せという。そして、その後代償として再復活してしまうシェムハザは、アラミス・・・神すら恐れる剣士・・・が斬りふせる、というものだった。
「アイツなら俺がいたら邪魔になるだろう。一人で殺るさ」と、ヅラが皆に言った。アラミスのことだ。
「ヅラさん・・・」と、泣きながらバーナードが言う。
「リアンノンちゃんを・・・助けてあげてください・・・僕、彼女が不憫で!!」と、バーナードが泣く。
「・・・分かっています、バーナードさん!あなたは、ロイさんに加勢してきてください、神殿までグールに来られたら困ります」と、ヅラ。
《――その少女になんの価値がある》
と、その時、その場にいた全員の脳裏に、直接女の声がした。アテナ神か!?!と、思わず誰もが思った。
「お前、誰だっ!!」と、バーナードが叫ぶ。
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