第36話 死線
十分な態勢でその解放軍とやらを出迎えるため、プレトリアの他のギルドからの応援隊も到着したのだった。
(ま、こんなかじゃ、オレが一番の剣術使いだな、おそらく・・・)と、レオンは思った。
レオンは、任務前日、親しくしていた同僚と酒を飲んでいた。
「俺の旧友だったらどうしてるかな、って思ってな」と言って、レオンはブランデーを飲んだ。
「止めるんじゃねーの??その政府に反抗するやつらを。そういう人たちだったんじゃないすか??」と、同僚・・少し後輩・・・が言った。
「そうだな」と、レオンは言った。
「だが嫌な予感がするんだ」と、言って、レオンは5杯目のブランデーを注文したのだった。
「俺、死ぬのかな、ってたまに思うんです、こういう死線をさまよう任務の前日は。小国地帯のギルド員なら、誰しも思った事はあるでしょうが」と、その後輩が言った。
「今日もその予感、来てるの?」と、レオン。
「いえ、不思議と、レオン先輩がいるから大丈夫、って思ってます。俺には彼女もいないし、別に死んでも悲しんでくれる家族も死んじまった。俺の命なんて安いもんです」と、その同僚が言った。
「そんなこと言うんじゃねーよ。アンタを育ててくれた人がいるんだろ。その人のために生きろ」と、言って、レオンは、後輩の背中を最期に少し叩いて、店を後にした。
カランコロン、と店のベルが鳴る。「俺だって明日死ぬかもしれない」と、ふとレオンは初めてそういうことを思った。
いつもなら、プレトリアなら無敗の剣士、「レオン・エーヴァルト」、死を恐れたことなどなかった。
何かしら、予兆のようなものがあった。
次の日、朝9時、50名の精鋭部隊は、国を守るため、プレトリア南西部の町へ馬を走らせた。
情報によれば、解放軍を名乗る敵は、今は100名近く来ており、村にたむろしてるらしかった。村を占拠しているらしい。
3日後、ほぼ寝ずの進軍で、プレトリアのレオンたちの軍は、その村の近くのポイントまでやってきた。
数日前、30名のギルド員がやられた地点だ。
「また来たのか・・・??」と、どこともなく声が頭上からした。敵の声だ!
敵の笑い声も聞こえた。「笑ってないで姿を見せろ!!」と、レオンたちの軍の一人が叫んだ
「わりぃけど、こっから先は一歩も通さねぇよ・・?」と言って、草陰から10名近くの、シャイン・ソードを構えた剣士たちが姿を現した。
レオンはその声に反応した。間違いない、その声の主の顔も見た、ジャック・ザハロフだった。あの藍色の目に茶色の髪、少し疲れたような顔、あれはジャックだ。
(オイオイ・・・・まさかの死神か??見間違えだといいんだがな)と、一瞬レオンは動揺した。だが、
(俺は同僚たちを守る。死なせるわけにはいかねぇ、ここからは本気を出すぜ!!ちょうどいい手ならしだ!!)と思いなおし、レオンはシャインソードを手に、臨戦態勢をとった。
――「紅蓮」「深・紅蓮」「絳煉」。炎の精霊が一番相性がしっくりくるレオンは、次々と技を変えながら、50名の軍勢の第一線で、たった10名の敵と対峙していた。
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