第29話 かたき討ち
「話の続き。私が28の時、私はあの人と婚約したわ。貯金も十分にあったし、何の問題もなかった。リラの国にいたんだけど、結婚したら、科学の国・リマノーラに移り住もうか、とか、将来のことも話し合っていたわ。リラの地は、兄と弟を失った地。私はそこまでいたくなかったの・・・思い出すからね」と、ゼルフィーネ。
「ところがね、神は私からあの人までも奪った。事故だったのよ、同僚からの攻撃が間違って、私の婚約者に当たってしまってね・・・出血多量で、なすすべもなく亡くなったと聞いてるわ」と、ゼルフィーネ。
「ちょうど私が非番の時の任務の時に亡くなったの。私、後追い自殺しようと何度も思ったわ。あの人が亡くなったあと、私はギルドを即やめた。いてもつらいだけだからね・・・。そしてそこから縁があり、悪神シェムハザを封印する役目につかないか、と、旅の途中だったエルフと名乗る人物から持ちかけられた。意外にも、私はOKしたわ、だって、兄と弟を奪ったのはシェムハザだもの・・・。かたき討ちができるかも、と思って、私は承諾したわ」と、ゼルフィーネ。
「そうか・・・確かに、シェムハザのやつは、何百年か一度には蘇って、死霊の国の化け物どもを使って、俺らのこの世界アラシュアを危機に陥れる・・・復讐に走りたいという人はごまんといるだろう」と、シルウェステル。
「君はこの国・・ハートフォードシャーの国に来てよかったと思う??」と、シルウェステルが尋ねた。
「ええ、リゼティーナやセレス、ヘレン、そしてリアンノンとも会えたし、それにこの国は風光明媚だしね!私は後悔してないわ」と、意外とゼルフィーネは明るく言った。
「悩んでいるのは私一人ではない、と思ったの」と、ゼルフィーネ。「だからここが好き」
「俺も、ここにきて救われた、って思いはあるよ。正直、最初リアンノンが俺とアレクシス・・・ハインミュラー兄上様の記憶、前世の記憶を維持していないと分かったときは、絶望したが・・・。ここにいる12使徒は、全員が重い過去を背負っている。だから、俺も君と同じように、一人じゃない、と思えた」と、シルウェステル。
「神がいないのなら・・・もしくは、居ても、広い世界の無数に困ってるたった一人でも救ってくれないのなら・・・私が巫女として、人々を守るわ。それが使徒の使命よ」と言って、ゼルフィーネはすくっと立ち上がった。
*
「リアンノンちゃん!」と、黄龍の神殿に来て、アラミスが言った。
「ここですよ、アラミスさん」と、黄龍の神殿で多少迷っていたアラミスに、頭上から声がした。神殿の2階の手すりから、リアンノンが手を振っている。
「お、そこか!今行く」と言って、アラミスが階段を探す。この神殿には、滅多に来ないのだ。
リアンノンは、いつもの巫女服から、儀式の服に着替えていた。色とりどりの、少しいつもより豪奢な衣装が、リアンノンによく似合っていた。
「アラミスさん、では、光の間に行きましょう」と、リアンノンがアラミスの手を握った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます