第27話 カロンの首輪
「ねえ、シルウェステルさん、あなたは神様なんて信じる??」と、ゼルフィーネが、丘に座って遠くを眺めながらふと言った。シルウェステルは、前世のことを思い出し、少しぎくっとなった。
『神様なんていないんだよ、アイリーン』と言ったのは、シルウェステルだ。
「さあ、どうだかな。俺は、前世、賢者をしてたから、神々とはコンタクトをとれる立場にあった。だから、神々が存在するのは知ってる。けど、信じてるか、と言われると、甚だ疑問だな」と、シルウェステルが言った。
「へぇ、神々ってのは本当に人とコンタクトなんて取れるのね。リアンたちが懸命に訴えても、大した返事来ないから、てっきりペテンにかけられてるのかと思ってたわ」と、ゼルフィーネが言った。
「私は神様が嫌い。私から・・・兄と弟と、そしてあの人を奪ったこの世界も。みんなみんな、壊れてしまえばいい」
「どした?ゼルフィーネ、急に。何かあったのか?」と、シルウェステル。
「ううん、あなたと兄君のアラミスさん見たら、自分の兄と弟を思い出しちゃってね。それに、今からグールを倒しに行くじゃない?ギルドでの任務のことも、思い出しちゃって」
「つらくないか?それなら俺、別の巫女に頼んでもいいけど」
「いいの、私は前世に・・・過去に縛られるほど弱くはない。ポジティブな女性のつもりよ」と、ゼルフィーネが言った。
「いわゆる先鋭的な女性、って感じだな。いいぜ、話の聞き相手になってやるよ、俺でよければ聞く!」と、シルウェステルが、ゼルフィーネの隣に座り、寝転ぶ。
*
「リアンノンちゃん、ちょっといい??」と、アラミスが午前11時、リアンノンの部屋の戸をノックした。
「ふわわ・・・二度寝してたのに・・・なんですか、アラミスさん!」と、リアンノンが部屋から出て来た。
「あのな!今日は、オレとシルウェステルさんと、ゼルフィーネさんで、東の方角にあるとある町に出ているという、グールを倒しに行くんだ。それで、シルウェステルさんによれば、君から光の加護を授けてもらえれば、俺もグールと対等に戦えるらしい。今のままだと、影喰われちまって、負けるかもしれないらしい。頼めるか?」と、アラミス。
リアンノンは、かつて片思いしていた男性を見上げた。
「なるほどね、グールですか・・・・私も見たこと、1度だけありますが。いいでしょう、アラミスさん、五神の神殿のうち、黄龍の神殿に来て下さい。30分後。私が加護を授ける準備をしておきます」と言って、リアンノンはにこりと微笑み、扉をしめた。アラミスには、リアンノンの首にあったカロンの首輪が目についた。
「首輪ねえ・・・・」と、アラミスは思ったのだった。
リアンノンの首回りにある、チョーカーのような「カロンの首輪」。これは、大地の巫女を表す印のようなものだ。これをつけていれば、その人は不死になる。他にも、この首輪をつけていると、摩訶不思議な力が使える、という噂もある。
(あれがあの子の本当の幸せにつながるのかねぇ・・・・アテナ神、まさか騙してないよな?そういえば、石化してる歴代の大地の巫女の像にも、首輪らしきものが刻まれていたな・・・)と、アラミスは自室に戻る途中、ふと思ったのだった。
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