第12話 リアンの片思い
(悪いもんじゃなさそうだがな・・・・)と、ハインミュラーが冷静に見ながら思った。
(この娘、誰に何とも言われず、勝手に加護をかけやがった・・・やはり、大地の巫女に選ばれし、素質のある女の子・・・・)と思ったのだった。
「分かってんのか、リアンノンちゃん、君は・・・」と、ハインミュラーがいいかけて、クレドがそれを手で遮った。
「いい、ハインミュラーさん。あのな、リアン、君はいるだけでいい。一緒に、悪神シェムハザを封印する任に就こう。俺も協力する。そして、二人で天国へ行こう。最期には、結婚しよう。君が納得したら。な??」と、クレドが言った。
リアンノンはにっこりと微笑んだ。
「はい、シルウェステル」
クレドは、そっとリアンノンの腕を引き寄せ、リアンノンの唇にキスをした。
「今日から君は俺のお姫様。俺は君の聖騎士さん。な??」と、クレドは言ったのだった。
「ええ」と言って、リアンノンはにっこりと微笑んだのだった。その顔つきに、アイリーンの面影を見た気がして、シルウェステルは思わずくらっとなった。
(前世の記憶がある俺は知ってるが・・・)と、ハインミュラーは頭を抱えて思ったのだった。
(クレドさんはクレドさんだ。だが、このアイリーンちゃん、はたしてこんなに笑う子だったか・・・???)と、ハインミュラーは怪訝に思ったのだった。
(前世の記憶がないと、こうなるのかもな。そっちの方が幸せかもな)と、ハインミュラーは思ったのだった。
*
「リアン、この前は、婚約を認めてくれてありがとう。俺も、800年は待つと決めていた。いよいよ、結婚できるな、リアン」と、シルウェステルが言った。
「そうね、シルウェステル」と、リアンがにっこりと微笑む。
「アイリーン・・・いや、リアン・・・どっちでもいい、君を愛している」と言って、シルウェステルはリアンの横にどっと座った。
「いつも、貴方は優しいわ」と、リアンが空を見上げて言った。
「前世の記憶を授けられても、いまいちしっくりこない・・・わけではなく、アイリーンは私なんだって、分かるの、シルウェステル。けど、私は今のあなたが好き」と、リアンが言った。
「ああ、そう・・・けど、俺は、前世の君が忘れられなくてね。悔恨の念があるわけではないが、それが俺を縛っている。そして、今の君の笑顔が、心を締め付ける。だから、俺は君のそばにいる。永遠にね」と、シルウェステルが言った。
「・・・・」リアンは複雑そうな顔をした。転生先で、シルウェステルの兄に転生していたアラミスという青年に、リアンは片思いをしていた。
「うん、シルウェステル」と、リアンは絞り出すような声で言った。前世のことも聞いている、クレド賢者であるシルウェステルを拒むわけにはいけない。
リアンの片思いについては、実兄のハインミュラーは知っていた。
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