第11話 光の加護をあなたに授けん
*
「アイリーン・・・・」と、リアンノンの手を握っている人がいた。封印の神殿の一室でのことだ。
「アイリーン!!」と、シルウェステルが思わず大声で言った。
その様子を、傍でハインミュラーがじっと腕組みして冷たい目で眺めている。
「ん・・??だ・・れ・・・・???」と、リアンノン。
「俺だよ、クレド賢者!!覚えてるだろ??」と、クレド賢者ことシルウェステル。
「え・・・?クレド・・??なんのこと?」
「こいつ、寝ぼけてんじゃねえの」と、ハイミュラーが言った。
「アテナ神によれば、全員過去の前世の記憶もったまま、だろ??おかしくね??」と、クレド賢者。
「おい、お嬢さん、君は前世、アイリーン・ラッセルという、とあるガーレフ皇国の町の修道女だったことは覚えてるか?」と、ハインミュラーが尋ねる。
「……??なんのこと??」と、リアンノン。
「だめだ」と、ハインミュラーが肩をすくめる。
「俺とクレドさんのときは、転生してもすぐに前世について思い出せた。とりあえず、1日たって、それでも記憶が戻らなかったら、そんときはそんときだ・・・」と、ハインミュラー。
「・・・」と、シルウェステル(クレド)が俯く。
「アイリーンちゃん・・・」と、クレドが、起き上がったリアンノンに覆いかぶさってむせび泣くのだった。
「俺が救いたかったアイリーン・・・」と、あまりにクレドが泣くので、リアンノン・・・少女には自分の名前すらわからなかったが・・・は困惑した。
「あの、あなたは誰なのです??」と、リアンノン。
「・・・そうだな。君はアイリーン、だが、“リアンノン”と名乗ってほしい。平和の女神、という名前だ。俺から見た前世の君のイメージだよ」と言って、元クレド賢者は泣き続けるのだった。
結局、1日待って、二人がどんなに前世の話を聞かせても、リアンノンは首を横に振って、意味が分からないという顔をした。二人は落胆のあまり、暗い顔をした。
「あのな、リアンノン、」と、シルウェステルが言った。
「俺は、本当は君をお嫁さんに欲しかったんだ・・・。俺のエゴだがな。だが、前世の君は受け入れてくれていた・・・。あのな、リアンノン、俺が巻き込んだ。君をこんな宿命に巻き込んだのは、賢者だったオレ。だから、約束するよ」と言って、シルウェステルはリアンノンの手を取った。
「“俺からの約束”。君を、この封印の任が終わるまで、1000年間、全身全霊をかけて守り抜く。それが俺の誓い、そして約束な」と言って、クレドはリアンノンの手を両手で握りしめた。
「リアン、と呼んで、クレドさん」と、リアンノンが言った。ふいの言葉に、シルウェステルは驚いた顔をした。
「俺のこと、”クレドさん“って呼んでくれた・・・??」
「だって、それが私の前世なんでしょ‥??よくわからないけど」と、リアンノンが納得してくれたように微笑んだ。
「私にもできること一つ、あるの」と、リアンノンが言った。
「あのね、クレドさん、私と両手を握って」と、リアンノンが言って、微笑む。
二人は、向かい合って、両手を絡ませてつないだ。
「私の加護。聖騎士さんへの誓い。リアンノンの誓い。私の命はあなたと共にある。えにしよりつながりのある私とシルウェステルさんことクレドさんに授けん、私の加護、光の加護をあなたに授けん」と、言って、リアンノンが目を閉じた。
リアンノンの体からふんわりとほとばしり出た光が、クレドの体も包み込んだ。
ハインミュラーが、驚いてそれをじっと見つめている。
「どう??」と、リアンノンが片目をあけてクレド賢者を見た。にっこりと笑っている。
「あれ??」と、シルウェステル。
「特に何も変わらないけど・・・??」と、シルウェステル。
「まあ、分からないでしょうけどね、シルウェステルさん、この加護が、あなたを永遠に護りますように」と言って、リアンノンはいたずらっ子っぽく笑った。
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