被害者の意見

エリー.ファー

被害者の意見

「確かに、私も悪いと思います。でも、相手が始めたことなので」


「あのね。私が悪いわけじゃないの。なのに、なんで、こんなにインタビューされて。カメラも来て、いい迷惑なんだけど」


「私、被害者なんですよね。なんで、こんなに責められなきゃいけないんですか」


「俺は、被害者なんだぞぉっ、なんでこんなに世間からバカにされなきゃいけないんだぁっ」


「あたしのこと、被害者だって思ってないんでしょ。こんなに大柄なおばさんだから、そう思ってるんでしょ。あたし、分かってるからね、そういうの。あんまり、上手く隠せてるなんで思わない方が良いよ。あたしはね。そういうのに敏感に気付くタイプだからね。分かった、分かったよね。何が言いたいか。あたしは、ただの被害者だけど、そんじょそこらの被害者とは違って、凄く能力が高いの。何が起きてるか、とか、相手がどう思っているのか、とか、もうピンと来ちゃうんだから」


「もう、終わりにしたいんだよ。俺は、疲れたんだ」


「被害者のことを守ろうとする国じゃないとは、思ってたけどさ。まさか、ここまでとはね」


「どうしても取材をしたいなら、ちゃんと正式な方法をとって下さい。スーパーにまで押しかけて、職場にまで押しかけて、保育園にまで押しかけるとか、最悪です。私は、加害者よりも、今、あなたに怒ってるんですよ。分かりますか。ねぇっ、分かってますかっ、今っ、へらへらしたでしょっ、首を横に振ったって分かるんだからっ、あんただよっ、あんたっ、あっちいってよぉっ、ただでさえ、あの事件でうちはめちゃくちゃなのにっ、なんで、こんな目に遭わなきゃいけないのっ、加害者の所に行けばいいでしょっ、あいつらの家族に聞いてきてよぉっ、どうしてっ、こっちばっかりなのよっ」


「もう帰して下さい。眠いんです。喋ることなんて何もないです。伝えたいことは、全て言葉にも文字にもしました。お願いします。ここから出して下さい」


「ごめんなさい。すみませんでした」


「失礼します」


「助けてくれるんですか。本当ですか」


「加害者が悪いんでしょ。うちは悪くないでしょ」


「警察、呼びますよ」


「まぁ、別に困ってないですし、取材は受けますよ。はい、どうぞ。こちらから入って下さい。お茶とか飲みますか、お菓子もありますけど」


「君、失礼だよ。本当に、何が言いたいのかさっぱり分からないんだけれどもね。ちゃんと日本語を使ってくれるかね」


「わしは、ここにずっといたんじゃ。いいか、ただ、ここにいただけなんじゃ。なのに、何で、こんなことになったのか。説明が欲しいだけなんじゃ。ただ、ちゃんと教えて欲しいだけなんじゃ」


「たぶん、相手の方、あぁ、加害者って言った方が分かりやすいですかね。認知症だったんだと思います。何となく、そんな感じがします。あの、うちの母も認知症だったんで、凄くに似てるなぁって、いうのが第一印象でした。でも、許しません。絶対に。殺してやろうって思ってます。本当です。包丁をバッグに入れて、相手の家の前にまで行ったこともあります。結局、何もできずに帰りましたけど」

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