F.T.PUNK ~昔話でヒャッハーしようぜ‼️~
サムライダイス
第一章 冒険のはじまり編
第1話 でっかい桃
そこに立っているのは、オーラを纏い銀髪に輝く髪をなびかせたスーパーモデルのように引き締まった身体の美しい女性だった。
「ジジィ、よー言った! それでこそおらが惚れたジジィだ!!」
と言い美しい女性は右足のつま先に力を入れた。
踏み込んだ力が凄まじく「メキメキ」とつま先は10センチほど地面にめり込んだ。
その凄まじい勢いの一歩は瞬時に赤鬼の元へと到着し、美しい女性はその場で赤鬼の顔面にハイキックをおみまいする。
「バゴッ!」っと強烈な音が響き、赤鬼の頭部は後ろへと飛ばされ巨大な岩にぶつかり止まった。
赤鬼の後頭部は岩にめり込み、後頭部からは血が滲み岩に付着した。
赤鬼は白目を向きうなだれる。
* * * * * * *
「ババァ!こんなでっかい桃どこで拾った!?」
ヨボヨボのお婆さんが答える。
「川で流れて来たから拾ったんだ。 おらがどんだけ、この桃を拾うのに苦労したことか、ジジィはわかっておらん!」
フラフラしてヨボヨボのお爺さんが、食い気味に口を開く。
「わしはババァがどんだけ苦労したかを聞いとらん! こんなでかくて不気味な桃をどうして拾って来たかを聞いとるんだ!」
お婆さんは巨大な桃を見つめる。
「ジジィはわかっとらんのー、こんな大きな桃があったら拾うにきまっとろう。 食っても食いきれんほどの桃だぞ」
お爺さんは呆れた感じでお婆さんを見つめる。
「お前はバカか! こんなでっけい桃が普通なはずなかろう。 しかも、川から流れて来たときた、中は腐ってるに決まっとる。 こんだけでかければ味もマズイだろうに、下手すりゃ食ったとたん死んじまうかもしれんぞ!」
お婆さんは不思議そうに、お爺さんを見つめる。
「何を言っとるんだジジィ、よー見てみー!」
「このみずみずしさ、色も食べ頃じゃ、この桃は旨いに決まっとうに。 そんじゃ、この桃はおらだけで食うからジジィはそこで見ておれ!」
そう言うと、お婆さんは包丁を取り出して巨大な桃に包丁を入れた。
しかし、桃はあまりにも巨大過ぎて、お婆さんの切り方では何時間も掛かってしまう感じだった。
それを見てお爺さんが行動に移した。
「見ておれん!わしがやる! しかしわしが切ったからには、わしもこの桃を食わせてもらうぞ!」
お婆さんはクスクスと笑った。
「なんじゃ、ジジィも食いたかったんか!?」
お爺さんは少し頬を赤めて照れていた。
「うるさいわい! ババァ、見とれよ! わしが一刀両断にしてやるわい!」
そういうと、お爺さんは物置から日本刀を取り出してきた。
いや、それは日本刀としては異常なほどの刃の長さであった。
刃の長さだけでも2メートルはある。
「ジジィ、それは物干し竿の代わりに買った安物の刀だぞ。 そんな長い刀を扱えるんか?」
「こんなのお安い御用じゃ!」
そしてお爺さんはその日本刀の鞘を勢いよく取ろうとしたが、刃が長ければもちろんそれを収める鞘も長いため、お爺さんは一人で鞘から刀を抜こうと一人でモガモガもがいていた。
それを見ていたお婆さんが笑っていると、お爺さんは怒りだした。
「ババァ!笑っとらんで手伝え!!」
お婆さんはヤレヤレという感じで、お爺さんの方へ向かった。
「ほれ!鞘は持っとるから、さっさと刀を引き抜け!」
お爺さんは日本刀の柄をギュッと力強く握りしめた。
「わかっとるわ!ババァ、しっかり持っとれよ!」
そう言うと、お爺さんは鞘から刃を勢いよく引き抜いた。
しかし勢いよく引き抜いたため、お爺さんはその反動で後ろに転がってしまい、壁に頭をぶつけてしまった。
それを見てお婆さんは爆笑している。
「ジジィは相変わらずヌケとるのう、そんな勢いよく引かんでも刃は抜けろうに」
お爺さんは強く頭を強く打ったらしく、頭を両手で抑えている。
「黙っとれ!わしゃ真剣なんじゃ、昔の血が思わず騒いでしもうたんじゃ!」
そう言ってお爺さんは起き上がり、巨大な桃の前に立ち集中した表情で桃の中心を鋭い眼差しで見つめだした。
その真剣な表情に、さっきまで爆笑していたお婆さんも黙り込み息を飲んだ。
長い沈黙の後、お爺さんは「キエェーーーッ‼️」雄叫びを上げ、刃の長い日本刀を大きく振り上げ上段の構えをしようとした時「ガツッ!」という大きな音が響いた。
なんと、日本刀を大きく振り上げたため、長い刃が天井に刺さってしまっていた。
それを見ていたお婆さんは、転がりながら爆笑していた。
「ハハハハハッ。ジジィ、おらを笑い殺すきか!」
お爺さんはまた顔を赤らめて、恥ずかしさを隠すように怒鳴った。
「笑うなババァ!わしゃ真剣なんじゃ!」
そう言うと天井に刺さった刃の先端を抜き、お爺さんは天井に当たらない角度で上段の構えをした。
「見とれよババァ! わしゃこの巨大な桃を一刀両断したる!」
そういうとお爺さんは目を閉じ、柄を握りしめ集中し始めた。
先程とは比べ物にならない集中力を見せるお爺さんの姿に、お爺さんの若い頃を思い出しお婆さんは少し胸がキュンッとなっていた。
そして、ついにその時が来た。
お爺さんはパッと目を開き、巨大な桃の中心を垂直に長い刃を振り下ろした。
その姿はまさに長年厳しい修行をした一流の剣豪の一太刀を思わせた。
刃は巨大な桃の真下まで届き桃を一刀両断した。
お婆さんは喜び拍手をしていた。
すると巨大な桃がゆっくりと、2つに分かれ始める。
美味しそうなみずみずしい果肉が覗かせ、お婆さんは更に喜んだ。
「ジジィ、見てみい!この美味しそうな桃!」
しかし次の瞬間、けたたましい悲鳴が二人の耳を貫いた。
巨大な桃の種部分の内側に、何やら人影の様な物が見えた。
二人は恐る恐る、その種の奥を覗き込んだ。
そこには、キレイに真っ二つにされた赤ん坊の姿があった。
二人は現実とは思えない光景に腰を抜かし、うろたえてしまった。
「ジジィ、どうする!? 赤ん坊を殺してしもうたぞ……」
お爺さんはオロオロしながら答えた。
「わ、わかっとるわ……しかし、どうして桃の中に赤ん坊がおるんじゃ……。 このままじゃ、わしらは罪人になってしまう……」
お婆さんは腰を抜かしながらも、お爺さんに近づく。
「な、なんとかこの赤ん坊を助けられんかのう……。 今すぐ、二つに分かれた体をくっつければ、何とかならんか?」
お爺さんは、大きく首を振る。
「バカいえ!普通の人間が真っ二つからくっつ訳なかろう!」
二人が少し沈黙した後、お婆さんはハッと何かをひらめいた様子でお爺さんに口を開いた。
「この赤ん坊は普通の人間とは違う! 普通の人間の赤ん坊が桃の中におるか!? この赤ん坊は、あやかしかバケモンのたぐいにちがいねぇ……。 やるだけやってみんべい!」
その言葉を聞いてお爺さんも強く頷いた。
「わかった!やってみんべい!!」
そういうと二人は、恐る恐る真っ二つに分かれた赤ん坊へ近づいた。
赤ん坊の切られた断面からは、大量の血や内臓が散らばっていた。
しかし、二人は散らばった血や内臓をできるだけ集め、それを赤ん坊に挟むようにして、赤ん坊をくっつけた。
しかし、赤ん坊は当然のごとく、くっつきはしなかった……。
それでも二人は諦めずに、赤ん坊を何度もくっつけた。
「頼む、何とかくっついてくれ」
「お願いじゃ、どうか生き返っておくれ……」
「お願いじゃ、お願いじゃ、神様仏様、どうかこの子を助けてやっておくれ……」
二人はいつか我が子を助けるかのように、藁をもすがる気持ちでお願いし助けを求めた。
その時、奇妙な現象が起きた。
二つに分かれた体がそれぞれ血と内蔵を吸収し、二つの大きな丸く赤い塊になった。
その後、赤い塊は徐々に形状を変化させ最終的には可愛い二人の赤ん坊になったのだ。
二人の赤ん坊は元気良く「オギャーオギャー」と泣いた。
お爺さんとお婆さんはお互いを強く抱きしめた。
「ジジィ……おらたちの願いが仏様に届いたんじゃ……」
「そうだな……この赤ん坊らはわしらの子じゃ!」
二人は赤ん坊達を抱え大粒の涙を流し喜んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます