第131話<いつかの解説の続き>♡

ノベロとチェリザはとある石造りの一室に光と共に現れた。室内には大きな白狐と黒狐の縫いぐるみが一体ずつ寄り添うように置いてある。


ノベロ「風景が一瞬で変化した・・・。ん!!??」


チェリザ「どうしたの?ノベロ君?」


チェリザは楽し気にノベロを上目遣いで揶揄うように話しかける。


ノベロ「な、なんでチェリザはそんな恰好なの!?」


彼女は黒とピンク色をしたビキニような下着だけを履いている。


チェリザ「あれ?昔、言わなかった?私、ネる時はこの格好よ?」


ノベロは彼女の肉体を見ないようにか彼女の顔だけを見ている。


チェリザ「フフ。いつもこの格好にしようかしら?そしたら貴方はずっと私と目を合わせ続けてくれそうね?」


ノベロ「ご勘弁を・・。」


チェリザ「・・・・。ごめんなさい。私浮かれ過ぎているみたい。」


チェリザは何か思うところがあったのか白いドレスを身に着けた。


ノベロ「ふう。チェリザ、いろいろと知りたいことがあるのですが・・。」


チェリザ「何から説明した方が良いかしら?」


ノベロ「じゃあ、まず、そもそも今の俺の状態ってどうなっているでしょうか?」


チェリザ「貴方は神になりました。階級は私と同じ第五級神です。」


ノベロ「え?俺も神ですか?いつの間に?」


チェリザ「役目を本当の意味で終えたとまり木は最後の転生を経て神になるかどうかの選択肢があの扉の前で出ていたのだけど、貴方の場合は他の選択肢は目に入らなかったみたいね。私と会うことを選んだ時点で神になることが自動的に決まったの。」


ノベロ「選択肢?そういえばなんか書いてあった気もするな。うろ覚えだが。」


チェリザ「クス。」


ノベロ「ちなみに選ばなかった方を選んだらどうなっていたんだろう?」


チェリザ「何の義務も負わない生を前世の記憶を持った状態で現世に転生できるの。その状態で何回も転生し過ぎると強制的に神にされちゃうけどね。更にもう一個の選択肢はいわゆる自由記入欄てやつね。・・貴方は私以外眼には入らなかったのね。・・嬉しかったわ。」


チェリザはノベロの手を両手でつかむ。


ノベロ「当然です。チェリザ様。」


チェリザ「・・・・!!ありがとう。」


ノベロ「後はとまり木って結局何だったんでしょうか?いまだにわからなくて・・。」


チェリザ「とまり木を理解するために『澱み』について説明が必要ですね。まずはそちらから説明します。」


ノベロ「ヨドミですか?」


チェリザ「貴方は疑問に思ったことはありませんか?人間に与えられた加護によるスキルは一体何をエネルギー源に発動しているかについて。」


ノベロ「あります。人間の世界では代償はなしと考えられていました。」


チェリザ「確かにそう認識されています。でも、実際は地上の生物がスキルや魔法を撃つたびに澱みが世界に溜まっていきます。」


ノベロ「澱みがスキルの源なのですね。」


チェリザ「後は生命の代償でもあります。」


ノベロ「といいますと?」


チェリザ「生き物が存在しているだけでスキルに比べれば極僅かですが、澱みが発生しつづけます。」


ノベロ「澱みが世界に溜まるとどうなるのでしょうか?」


チェリザ「魔物という形で生物に牙をむきます。澱みとは人間の表現で黒い霧と呼ばれるものでもありますね。」


ノベロ「魔物を倒すには一般には加護によるスキルが必要で、スキルを使うと魔物の元が増える。で、澱み自体は生物がいるだけで少しずつ発生する。・・・あれ?」


チェリザ「そう、世界の仕組み上、澱みを減らす為にはスキルに頼らずに魔物を倒すしかありません。ただ、スキルを使わずに魔物を倒せる生物は多くはありません。基本的には溜まり続けていきます。」


ノベロ「でも、そこまで魔物は出ないですよね?」


チェリザ「ここでとまり木の登場です。とまり木は世界の澱みをその身に集めていきます。」


ノベロ「澱みが休むためのとまり木というのが由来ですか?」


チェリザ「由来はそうですね。まあ、正確にはとまり木の状態では周囲に集めると言ったほうが正しいのですが。」


ノベロ「周囲に集める?妙な表現ですね。」


チェリザ「ええ。とまり木は基本的には普通の生物と変わりませんが、強い負の感情にとらわれた場合、澱みが体内に吸収されます。貴方も覚えがありませんか?」


ノベロ「やはり・・・・・あの謎の一時的なパワーアップは災厄の予兆だったのか・・。あの現象が続いていたらやはり危なかったということか・・。」


チェリザ「そのとおりです。謂わばとまり木とは災厄になるために選ばれた生贄なのです。約100年ごとに数体の魂が選ばれます。そのうち災厄になるのは最初に強い負の感情にとらわれた者、該当者がいない場合は最後まで生き残った者が災厄候補になります。」


ノベロ「災厄ではなく災厄候補?」


チェリザ「ええ。候補です。生き残った者が負の感情に捕らわれるまでは災厄とはなりません。」


ノベロ「なるほど・・・む?今回の様に災厄討伐時点で他のとまり木が直ぐ傍で残存している場合でも澱みは浄化されるのでしょうか?澱みが近くのとまり木に集まったりとかはしないのでしょうか?」


チェリザ「浄化自体はされます。ただ、災厄が討伐された時点で浄化が開始されますが、完全に浄化する前に別のとまり木に強い負の感情が現れた時はそちらに引きずられ、新たな災厄となる可能性はあります。普通はとまり木は災厄に近づかないのでそのまま浄化されたことしかありませんが。」


チェリザはノベロに微笑む。


ノベロ「そうだったのか・・あの時なんか嫌な予感がしたんだよな。」


チェリザ「貴方の判断は正しかったと思います。世界にとってもそして私の個人的な都合にとっても。」


ノベロ「俺にとってもですね。」


チェリザ「ええ。」


チェリザは微笑んでいる。


ノベロ「ところで、仮に全員が穏やかに死を迎えた場合はどうなるのでしょうか?」


チェリザ「その場合は最後のとまり木の死体に澱みが集まりますが、既に死亡しているため、そのまま災厄になることなく穏やかに浄化されます。これが理想的な状態ですね。」


ノベロ「時々、数百年の空きが出るのはそのパターンなのですね。」


チェリザ「ええ。これは地上の生物への試練という意味合いもあります。説明が前後しますが、災厄を討伐し浄化すると世界全体の澱みを大きく減らすことができます。なので今現在の地上は澱みが少ない状態となります。」


チェリザはかなり不満げな顔をしながら説明している。


ノベロ「・・・ありがとう。チェリザ。」


チェリザ「・・・・。よく頑張りましたね。」


チェリザは微笑を浮かべながらノベロに顔を近づけ、お互いの視線が絡み合う。


続けてクチュクチュクチュ・・という水のような音が部屋に響く。


チェリザ「・・・ノベロ君・・・・。」


ノベロ「・・・チェリザ様・・・俺は・・・。」


彼の眼は爛々と光っており、彼の下半身の一部はズボンの上からもわかるぐらいに膨張している。


チェリザ「・・・フフフ。おいで、私のノベロ君♡」


チェリザは彼の下腹部をちらりと見た後に蠱惑的な笑みをしながら指で円を描くように手を動かす。


二人は一瞬白く光り、次の瞬間には生まれた時の姿となっていた。


ノベロ「・・・チェリザ様!!!」


ノベロはチェリザを押し倒し、彼女の大きな乳房に吸い付く。


チェリザ「・・・フフフ。『様』は余計よ。私だけのノベロ。」


チェリザの肉体に夢中な彼の頭を抱えるように愛撫する彼女は聖母のような笑みを浮かべていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る