第36話 輝紅3
前回同様に炬燵布団のない食卓代わりのテーブル前に座ると正茂がミルクティーを淹れてくれた。兼見は馴れたが深紗子から、
「
先ずおもむろに
「どうした、
戸惑う深紗子に兼見が催促した。
「ごめんなさい
ウッと兼見は喉を詰まらせた。伝言を聞いたんと違うんか。
「でも神社を継がせるために兼見さんをわざわざ寄越したんでしょう、茂宗さんは昔の罪滅ぼしに。そう言ってましたけれど……」
と
「ええ、そうですけど」
まさか深紗子の代役とは口が裂けても言えない。
「それは確かで、昨日は一生懸命説得されました」
と正茂が擁護した。
兼見は昨日会ったばかりで擁護する正茂の顔をしみじみと眺めて、
「
「兼見さん、今更急に何の話をしゃあるんですか」
正茂が急に話が飛んでると言いたげに割り込んできた。
「君の話や、いや、
今度は
「それ以前から正茂さんを知っていたでしょう」
と兼見は言った。
「その話はもう済んでるからいいわよ」
兼見と輝紅さんが数秒見合っていると今度は深紗子が急に割って入った。
「済んでるって
「深紗子さん、あなた茂宗さんから聞いてるのね」
深紗子は観念したように頷いた。長い髪が顎の下で合わさって微かに揺れた。
深紗子は父から
「あなたを寄越したのは、最近の甥の正茂さんに対するあたしの動向を知って、あたしの今の素性が気になったのね」
それはこっちも言いたい。姉の死を知って雲隠れするような人とは思わなかったが、正茂さんから聞きいて、だいたいの様子が分かり気持ちを落ち着けた。
「そうしたのは茂宗さんの消息を知りたかっただけよ、でも本当に真っ当に生きていてくれて安心したのよ。姉が命がけで恋した男がしょうもない相手だと解れば、姉は死んでも浮かばれないでしょう。危うく、それで私はいっときつまらない宗教団体に引っ掛かったけど。ただ神や仏はそれ以後は信じなくなっただけよ」
「それじゃあ僕はどうすれば良いんですか?」
「あなたはもう陽子次第よ。娘が此処に居たいと言えばそうしてあげて」
「じゃあ今、此処に陽子を呼んで訊いても良いですか?」
「好きにしなさい。あたしはもう帰るから」
と
「じゃあこれでお父さんからの用件は終わったのか」
「そうね、お父さんは、
「そうか、それでいきなり聞かれて最初は否定したのか」
あなたが正茂さんに含み有るものの言い方をした。それを察した
「肝心の
もうー、そんな言い方が有りますか、と深紗子は兼見の物言いに眉を寄せた。
「陽子に会ったばかりの大学卒業前ならそうしたかも知れないけれど、今はスッカリ陽子に丸め込まれているから、そうはいかないでしょう」
「そうよね、陽子さんと二人で二年も掛けて築いたものを今日からまた元どおり改める、何て言われれば、あたしなら人格を疑うわよ」
と今度はハッキリと語尾は兼見に向けられた。
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