第1話 「何かを学ぶのに、自分自身で経験する以上に良い方法はない。-アルベルト・アインシュタイン-」

 俺は、ゲートを越えて地界『アンダーヘブン』に到着した。

 周りを見渡す限り、俺は森の中にいた。

 手に入れた能力である『引力操作』を試すため、いい感じの生物を探していた。


「お!良い所にイノシシがいる」


 イノシシを見つけた俺は早速攻撃をしようとした。しかし、ミューは肝心なことを忘れていた。応用が効くという理由で選んだ『引力操作』であったが、実際は———

 『引力操作』だけやったら相手にダメージ与えられなくね?


「幸いイノシシはこちらに気付いていないみたいだ。少し考えよう」


 まず、『引力操作』で出来ることを考えよう。引力というのは、簡単に言えば物体どうしが引き合う力だ。それを操作することができる。

 そうだ!いいことを思いついた。今、この漂っている空気に含まれている粒子の引力を強くし、集合させて武器を作れば良いんだ!

 でも、言ってることやるのって難しくね?

 まあ、とりあえずやってみるとしよう。

 

「なんかすぐ出来たんだが。粒子を集合させて作った剣だから、パーティクルソードと呼ぶとしよう」


 やってみると思った以上に簡単だった。というか、特に技術は使っていない。引力を変えただけで出来た。作りたい物をイメージすることも大切なのか?『引力操作』は、やっぱり使い勝手の良い能力だった。


「火力はどのくらいかな?」


 そういい、俺はパーティクルソードでイノシシを攻撃した。すると、イノシシは一瞬にして動きを止めた。


「思ったよりもいい感じに切れたな」


 切れ味もなかなか悪くない。引力を更に細かく調整すれば、もっと切れ味も良くなるだろう。

 パーティクルソードは、粒子を集合させて作っているだけなので、『引力操作』を解除すれば、すぐに分解することができるため、持ち運ぶ必要はない。


「食料も水も無いから、湖とか探しながら狩っていくか」


                  ◇◆◇


 なんやかんやあって、1週間分くらいの食料は確保出来た。地球にいた頃は、研究室に引きこもって研究ばかりしていたが、こんなサバイバル生活も悪くない。

 今は水を確保するために、湖を探しているところだ。

 『引力操作』も大分上手く使えるようになったものの、移動に使うのは流石にちょっと危ないかなと思ったため、移動は歩きで頑張っている。


「あれは...湖だ!」


 そして、最初の地点から少し歩いたところで俺は湖を見つけた。遂に湖を見つけ、感情が高まり、俺は湖まで走って行った。


「水を運ぶのはちょっと難しいからとりあえずここを拠点とするか」


 俺は、記念すべき一つ目の拠点を湖の隣に作ることにした。

 拠点を作るのにも『引力操作』が使えそうだ。粒子を集合させ、建造物を作る。武器を作るよりも大変そうだ。俺は、しっかりと集中し、イメージをして『引力操作』を使用した。


「いや、出来たわ。簡単に出来てもたわ」

 

 俺は、簡単に拠点までも作ってしまった。


                  ◇◆◇


 拠点を建ててから早1週間。拠点を建ててからは、ぶっちゃけ暇だった。

 狩って、食って、水飲んでの毎日だったからである。そろそろ、魔物と戦ってみたいもんだな。

 そう考えていたら、都合の良い所に、スライムが現れていた。


「スライムよ!お前の力、俺に見せてみろ!」


 そう言い、俺はパーティクルソードを瞬時に作り、スライムに切り掛かった。

 すると、スライムは真っ二つになり、倒れたかと思った。しかし、スライムは2体に分裂しただけで、倒せていなかった。


「何?スライムのクセに中々やるじゃなか」


 恐らく、このまま切り続けても、分裂される一向で倒せない。何か別の方法を考えなければ。

 『引力操作』で、スライムが地面に引きつけられる引力を高める。そうすることにより、スライムは動けなくなる。その間に、直接殴る。

この方法で行こう。


「引力強化!」


 2体のスライムの動きが止まった。俺はそのままスライムを1体ずつ殴りに行った。

 

「うおりゃぁー!」


 力強い声で、俺はスライムをまず1体殴った。

1発殴っただけで、スライムは弾けた。

 そして俺は、もう一体のスライムも殴った。こっちも、1発殴っただけで弾けた。


「斬撃は効かないからそこそこ強いのかなと思ってたけど、耐久力自体はそこまで強くないんだな。勉強になる」


 スライムを倒した所に、何か素材のようなものが落ちている。


「これは?」


 手で触ってみたところ、ゼリーのように柔らかい感触だった。

 もしかしたら食べられるかもしれないと思い、俺はそのままかぶりついた。


「う、うううううまあぁい!」


 なんか、こう、とても柔らかく甘い感じが、口の中に広がった。


「美味すぎる!正直、イノシシの肉よりも美味いかもしれない。よし、なら当分困らないくらいスライムの素材を集めるぞ!」


 俺は、また1週間ほどスライムを狩って素材を大量に集めた。スライムだけでなく、他の魔物の素材も集めた。ちょっとでかい鳥とか、ちょっとでかいヘビとか、なんかそういうのも狩っていた。落とした素材は、まあ、生で食ったら腹を下しそうなものだったから、持ってるだけだが。


「これだけ食べ物とかが揃えば、旅に出ても良さそうだな」


 俺はそう思い、2週間世話になった拠点を壊すかそのままにするか悩んだ挙句、壊さないようにした。拠点がなくて困っていたら勝手に使ってどうぞという看板を立てて、俺は拠点を離れ、旅に出た。

 この時の俺は、この拠点がのちに湖の近くにある無料宿泊施設付きの観光スポットとなることを知らなかった。

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