第10話:川崎に欲しい物を尋ねてみる
月曜日のお昼。
「お疲れっす、川崎」
「ん? あぁ、お疲れーっす、冴木」
俺はお昼休みに入ったタイミングで席から立ちあがって川崎に声をかけてみた。理由はもちろん水島さんとの約束を果たすためだ。
「なぁ、良かったら今日は一緒に昼飯でも食わないか?」
「ん? あぁ、もちろん良いぜ。今日は桜が部活の打ち合わせで部室の方に行っちゃったからさ、ちょうど今日は誰かと一緒に食いたいなって思ってた所だったんだよ」
川崎は笑いながらそんな事を言ってきた。今の言葉からわかるように、川崎と水島さんはいつも一緒に昼飯を食べているんだ。
でも今日は俺が川崎と誕生日プレゼントの話をさせて貰うために、水島さんにはわざと教室から出て行って貰ったというわけだ。
「はは、それはタイミングが良かったな。それじゃあさっさと昼飯を食おうぜ」
「あぁ、わかった」
そう言いながら俺は川崎の前の席に座って昼飯を机の上に並べていった。ちなみに俺の昼飯は先ほど食堂で買ってきたコロッケパンと焼きそばパンだ。
そして川崎が今食っている昼飯はもちろん水島さんの手作り弁当だ。せっかくなのでチラっと川崎の食ってるお弁当をのぞき込んでみると、色とりどりのオカズが入っていてとても美味しそうに見えた。
(……ま、でも水島さんの手作り弁当の件はひとまず置いておくとするか)
今日は水島さんのために川崎の欲しい誕生日プレゼントを聞いていくというミッションがあるので、水島さんの手作りのお弁当についての話は今は置いておく事にした。
という事で早速俺は昼飯を食いながら川崎に本題を振っていってみた。
「あ、そうだ。そういえば川崎ってもうすぐ誕生日なんだろ?」
「え? あぁ、そうだよ。ってかよく知ってんな? 俺誕生日の話なんて冴木にしたっけか?」
「はは、何言ってんだよ? 前に教えてくれたじゃん。いよいよ来月が誕生日なんだって楽しそうな顔しながら俺に語ってくれただろ?」
「あれ? そうだっけか? あー、まぁでもそう言われたら、確かに冴木に誕生日を教えたかもしんないな、あはは」
もちろん嘘だ。俺に誕生日を教えてくれたのは川崎じゃなくて水島さんだ。
でも川崎は疑う事もなく自分で言ったと思ってくれたようなので、俺は笑いながらそのまま話を続けていく事にした。
「はは、そうだろ? それで川崎とはここまで仲良くなれたんだし友達としてはちゃんと祝わってやりたいなって思ってさ。だから俺から川崎に何か誕生日プレゼントを買ってやるよ」
「え? マジで!? はは、そりゃあ嬉しいなー!」
「あぁ、だからさ、川崎の方で何か欲しい物とか気になってる物とかあったりするか? 気になる物とかを色々と教えてくれればその中から良さそうなの買ってくるぜ?」
「なるほどな。うーん、でも欲しい物かぁ……でもいきなりそう言われるとちょっと難しいよなー」
そう言って川崎は腕を組みながら深く考えだしていった。
「確かにいきなりそう言われても難しいよな。あ、それじゃあ趣味とか好きな事とかから考えていったらどうだ? 何か一つくらい趣味とかあんだろ?」
「あー、なるほどな。そういうので考えていくとしたら……あ、それじゃあさ、実は俺、モンコレがめっちゃ好きなんだよな」
「モンコレ? それってモンスターコレクションの事か?」
モンコレことモンスターコレクションとは、名前の通りモンスターを集めて育てる育成RPGゲームだ。育てたモンスターはプレイヤー同士で通信対戦をする事も出来るので幅広い戦略性もあって物凄く楽しいゲームになっている。
さらにモンコレは俺達が子供の頃からアニメ放送がされている事もあり、老若男女問わず幅広い世代に親しまれている大人気ゲーム作品となっている。おそらく日本で一番有名なゲーム作品だと言っても過言ではないだろう。
「そうそう、それだよ! あ、もしかして冴木もモンコレやってんのか?」
「まぁ超有名なゲームタイトルだし俺も過去作は何本かやった事はあるよ。最新作はやってないけど、でもモンスターの名前とかは今でも何となくわかるとは思うよ」
「おー、そうなんだ! あはは、やっぱりモンコレはめっちゃ面白いよなー!」
「あぁ、俺も小学生とか中学生の頃は寝る間も惜しんで頑張ってモンスターの育成を頑張ってたなー」
俺は川崎とモンコレの話をしながらそんな昔の事を思い出していった。
「はは、そうなんだ? あ、ちなみに俺は今でもモンコレはかなりやり込んでるぜ! 部活の後輩と頻繁に対戦とかもしてるんだー! って、あ、そうだ! それじゃあせっかくだからモンコレの何か商品を買ってくれよ。グッズでもカードでも小物類でも何でもいいからさ。そこら辺は冴木のセンスに任せるわ!」
「あー、なるほど。モンコレ関連か」
モンコレの商品なら色々と種類もあるだろうし、これなら水島さんと誕生日プレゼントを被らせないようにする事も容易だな。
「あぁ、わかった。それじゃあそこら辺で何か良さそうな商品を見つけたら買っておくよ」
「はは、ありがとな、冴木! あ、それじゃあ俺もお返しに冴木に誕生日プレゼントをあげないとだよな。そういえば冴木は誕生日っていつなんだ?」
「俺か? 俺は再来月の十日が誕生日だよ」
「ふぅん、割と佐伯も誕生日は近いんだな。それじゃあ俺の方でも冴木の誕生日プレゼントを用意しないとだな。あ、ちなみに冴木も何か欲しい物とかあるか?」
「え? うーん、そうだなぁ……って、はは、確かに急にそんな事を言われても中々思いつかないもんだな」
「あはは、やっぱりそうだろ?」
「あぁ、まぁとりあえずちょっと考えてみる事にするよ。そんで何か欲しい物を思いついたら真っ先に川崎に伝えるわ」
「わかった。ま、でもなるべく安い物で頼むぜ?」
「はは、わかってるよ」
という事で俺は川崎の欲しがりそうな誕生日プレゼントについての情報を集める事が出来た。
(よし、それじゃあこの情報を水島さんに教えないとだな)
俺はスマホのLINEを開いて水島さんに今の情報をメッセージにして送っていった。これにて水島さんからの依頼は無事に達成したのであった。
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