影の騎士団

Azu.

プロローグ

 世界の存亡をかけた戦い、創世大戦。世界を滅ぼそうとした「天」を相手に、一人の英雄とその騎士団が各種族を団結させて戦い、そして勝利した。


 その後、世界は三つの国に分かれ、相互扶助のもとで復興と繁栄の道を歩み始める。


【虹の国】

人間族で構成されている国。国名は、この大陸で開花した7つの属性の力の色が虹の七色に当たることに由来する。


【アケトヴァム連邦】

プルシャ(巨人)族、ラプトリエル(鳥人)族、マゴス(魔法使い)族、大樹の森に暮らす「森の民」で構成されている国。国名は、大戦の英雄ウェントゥス・ストームウォーカーが各種族をまとめ上げるための会合の場として、この地に築いた建造物アケトヴァム(合一を意味する)に因んで付けられた。


【サーリーン】

空中都市で暮らす「空の民」と海中都市で暮らす「海の民」で構成された国。国名は、澄み渡った空と穏やかな海を願って付けられた。


 約1000年の月日が流れ、世界は長きに渡る平和と繁栄を享受していたが、それも近年綻び始めた。


 ことの発端は虹の国から始まる。人間族はこの1000年でかつてないほどの栄華を極め、本国がある虹の大陸に留まらず、世界各地に街を作り暮らしていた。だが、彼らの欲望は止まるところを知らない。


 虹の国の権力者たちは、人間族の更なる発展を阻んでいるという理由を以て、長きに渡り平和に貢献してきた中立組織「晴天」に政治的圧力をかけ、解散させた。それが今から50年前の話である。


 程なくして、虹の国を台頭する七大家族ファミリーが覇権を争い始め、その波は世界各地の人間族へと広がっていった。


 この状況に対して、「晴天」に政治的圧力をかけていた頃から不信感を抱き始めていたかつての同盟二国、サーリーンとアケトヴァム連邦は虹の国と国交を断絶し、それに伴って、各地の転移門(二地点間を瞬間移動できる装置)は閉ざされ、陸路、空路、海路全ての見直しがなされた。



 それから30年以上が経ち、未だ人間族同士の争いに終わりは見えず、そこへ更なる混沌を生み出すかのように、「狂獣病(霊獣や魔獣を凶暴な狂獣へと変貌させる不治の病)」が世界規模で発生する。


 七大家族はすぐさまにこれを「晴天」残党による報復と断定し、かつてその本部が置かれていたという理由で竜縁自治領(全種族が一緒に暮らす特別区)全域への立ち入り調査と軍の駐在を求めたが、事実無根且つ一方的な要求であることを理由に竜縁政府はそれを拒み、両者は完全に対立路線へと突き進んで、今や一触即発の状況に至る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る