第17話 飛行場現る
寛永19年1月末。
五島藩は、朝から途轍もなく大きな音で覆われていた。それは、朝日とともに東南の方角から、キラキラ光る物体が連れてきた音だった。
ゴー、ゴー、ゴー、ゴー、ゴー。
次から次に、飛んできた。
それらの全ては、三井楽の鉄条網の中に滑り込んで行くのだった。敷地は、きれいに整地され、長い広い道路のようなものも、すっかり、固められ、そこに降りてきているのであった。
工事が、終わったのである。
やがて、その空から舞い降りてきた銀色の鉄の塊は、整地された敷地に整然と並び始めた。
夕方までには、百を超える塊が整列した。
翌日、盛次は朝一番に盛利への報告に訪れた。
「父上、昨日の物体は、ジェット戦闘機とか申すものと、輸送機とか申すもので、敷地はそれらの基地として使われるとのことです。アドメニア合衆国空軍の基地となるとのことです。」
「なに?基地になる?そうなると、毎日、あのような大きな音で悩まされるのか?」
「はい。どのような事を行うのか、詳しくはわかりませんが、訓練も行うとのことで、ほぼ毎日、飛び立っては、降りてくるという繰り返しになるとのことでございます。」
「それは、困るのー。藩内の人々も、不安であろうし、うるさくて昼寝も出来ないではないか。のー、木場、どう思うか。」
「あれだけの音、魚達が怯えて、漁に響くようなことが無ければよいのですが・・・」
一方、三井楽の歓楽街は、ジェット戦闘部隊の配属で、さらに活気付いていた。
スナック「レイチェル」では、江戸から来たという娘も働くようになっていた。
「江戸で失業し、五島に遊びに来て居ついた娘は、何処のどいつだい?アタシダヨッ!悪いかい?江戸なんて、冷たいもんさ、使うだけ使って、ある日、首だからね。まあ、お金はたんまり貰ったけど、遊んでばかりいても面白くないし、ここのママ良い人だし、働くことにしたんだよッ!で、あんた、誰よ!え?シカリ?何してんの?パチンコ店の横の消費者金融?へー、儲かってんの?なんか、怪しいけどね~。」
「最近、客が増えてね。なんかね、補償で貰った金が底付いたみたいで、オニヨメプラザで負けた客が来るわけよ。お陰様。」
「あこぎなまねしてるんじゃないの?」
「とんでもない。うちは、良心的な店ですから。それより、あんた名前は?」
「あたし?口説こうってわけ?西山須美子って、言うの。わかった?」
「なんか、聞いたことある名前だけど。パクってない?」
「どうだって、良いじゃない。あたしね、フルーツ好きなのよ、頼んで良い?」
「頼むのは良いけど、最近、やたら高くなってないか?ねえ、ママ。」
「そりゃあ、そうよ。あれだけ外人さんが来て、何でもかんでも買いあさるんだから、高くなるわよ。ほら、補償金を使い果たした人たち、自分ちで食べる米や味噌まで売っているんだって。どうするんだろうね。」
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