第8話 隠元からの提案

五島藩主・盛利は、この数日、気分の良い日々を過ごしていた。

  ブログへの隠元の書き込みは、盛利の藩の活性化策を褒めたたえるものであった。さらには、ホームページ開設の手伝いをしても良い、との申し出まで付け加えてあった。

  盛利にとって、ホームページの開設がどのようなものか、費用がどのくらいかかるものか、皆目わからない中での隠元の申し出は、何物にも変えがたくありがたいものであった。

  早速、依頼したのは言うまでもなかった。

  そうした隠元との藩の活性化についてのやり取りが続いていたある日、盛利はブログを見てビックリした。

  これにまでにない200名という訪問者が盛利のブログを訪れていたのである。これまでの盛利のブログには、訪問者は1日に10人前後しか訪れるものはなく、それこそのんびりコメントを読んだり、返事を書いたりしていたのであった。


  「これは大変なことじゃ。わしのブログは、シカリ殿の『江戸っ子でぃ』と同じように、毎日10人程度しかお客さんはいなかったのじゃが。いったい、これはどうしたというものかのー。何が良かったのかのー。」


  大騒ぎで、家来を呼び出したり、つばき姫を呼んできたり、自分のブログへの評価を求めるのであった。

  浮かれる盛利や家来達を冷ややかに見ているのは、つばき姫であった。


  「殿、何事も波がございます。それにブログとやらの客が多いからといって、五島藩には何もお変わりはございませぬ。もそっと、人々のためになることは出来ないのでございますか。」

  「いや、これがなかなか良い結果につながりそうなのじゃ。他でもない、盛次の進言によってホームページなるものを作ることにしたが、これで五島藩の品物を売ることが出来るのじゃ。どうじゃ、大したものであろう。」

  「それは、確かな取引でございますか?朱印船の取引のように幕府が後ろ盾としてあるのならば安心でございましょうが・・・。」


  つばき姫は、それ以上、続けなかった。

   盛利と家来達の浮かれ様から、自分の意見など受け入れられないことがわかっていたのであった。

   事実、盛利と家来達は、ブログの話から、ホームページによる藩の活性化の話しに進み、それこそ蜂の巣を突っついたような有様になっていたのである。まるで、ホームページの開設で五島藩が見違えるように活性化するような、これまでにない人々が五島藩を訪れ、江戸と見違えるような活気を帯びるような、そのような勢いで、話しは膨らんでいたのであった。

   つばき姫は、ポツリと言って、その場を離れた。


   「はやり病のようなものじゃ、そのうち覚めるのであろう。」

   

   当然のことだが、その誰一人として、隠元の策略に気づいていなかった。

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