第4話 方針決定

ボッシュと会ってからのひと月ほど、隠元はあちこちの知人と連絡を取り合ったり、図面を広げたり、様々な資料と格闘していた。

   もう数日で、新年を迎えるというある日。

   隠元は、アドメニアに帰ったボッシュに電話をかけていた。


   「この前の話だけど、一箇所だけ該当する場所が見つかったよ。それで、正月早々にでも現地調査をかけようと思っている。そこで、一つ心配なのは、幕府を説得することが出来るのか、ということだけど・・・」

   「隠元、そこは心配しなくていいよ。確実な場所を確保してもらえれば、あとは僕の仕事だ。とりあえず、着手金を送っておくよ。」

   「わかった。それから、君と僕の関係が表に出ることはないんだろうね。特に事前調査を僕の会社がすることも。」

   「大丈夫だよ。全て僕がやったことになるのだから。」

   「そうか。それを聞いて安心したよ。とりあえず、現時点で調査した内容と場所がわかる地図をメールで送るよ。」

  

   ボッシュの約束で少し安心したのか、隠元は久しぶりに二人の社員を飲みに誘った。

   飲み会となると、いつものとおり西山須美子の甲高い声と、無題勝山の低音のブルースをいやと言うほど聞かされるのである。


   「ニシヤマ~~、スミコダヨ~~。」

   「パッパパヤーパー、パッパパヤーパー。」


   飲み会のときは、いつもこの調子で二人とも周囲のことなど無頓着。完全な自己中であった。そして、この時だけは隠元はこの二人を採用したことを悔やむのであった。

  

   年が明けて寛永17年正月4日。

   出勤してきた無題と西山を前に、隠元は新しいプロジェクトの指示をしたのであった。   

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