ダイアモンド

平 遊

~いままで、ありがとう~

 星には、寿命がある。

 決して、永遠ではない。

 だからこそ、最期の力を振り絞って星は流れ落ちるのだ。最後の最後の輝きを残して。


 僕は三兄弟の末っ子だ。とはいえ、三つ子。ほぼ一緒に誕生。だから、寿命もほぼ一緒。

 そんな僕たちは、人間たちに『ダイアモンド座』と呼ばれている。

 ダイアモンド。キラキラ光る石。

 多くの人間が憧れる石のようだ。その輝きが、僕ら星に敵うことは、無いと思うけれど。


 僕には最近、お気に入りの人間がいる。

 名前は、幸成ゆきなり

 幸成は、小さい頃からなぜだか僕のことをよく見ていた。他にも星はたくさんあるのに。

 それで、色んなことを僕に話してくれるんだ。

 好きな人ができた、とか。


 僕は幸成のことを最後まで見守りたいと思っていた。だけどああ、僕にはもう時間があまり残されていないんだ。


 ある日、幸成はもう一人の人間を連れて僕の兄さん星のことを見ていた。

 兄さん星の寿命は、尽きようとしていた。


「あの3つの星は、ダイアモンド座なんだ。うちひとつが、もうすぐ流れるらしい。もし、今夜あの星が流れたら、俺と正式に付き合ってくれないだろうか、鈴音すずねさん」


 幸成はそう言っていた。

 そしてその夜、兄さん星の寿命は尽きた。


 それから少ししたある日、幸成はまた鈴音を連れて、僕のもうひとつの兄さん星のことを見ていた。

 兄さん星の寿命は、尽きようとしていた。


「覚えてるかな? 去年、あのダイアモンド座の星がひとつ、流れたのを。もうすぐもうひとつ流れるらしい。もし、今夜あの星が流れたら、俺と結婚しよう、鈴音」


 幸成はそう言っていた。

 そしてその夜、兄さん星の寿命は尽きた。

 僕はひとりぼっちになった。


 それからまた少ししたある日。

 幸成は鈴音を連れて僕を見ていた。

 僕の寿命は尽きようとしていた。


「鈴音、覚えてる? あのダイアモンド座。去年、2つ目の星も流れてしまったけど、最後のひとつの星も、もうすぐ流れてしまうんだ。俺はダイアモンド座が好きだった。特にあの、最後に残った星が」


 幸成の言葉が、僕にはとても嬉しかった。

 僕も。僕もだよ、幸成。

 もし生まれ変わることができるなら、僕は人間になって、幸成のそばに行きたい。


「鈴音。そろそろ子供を作らないか。俺たちの子供はきっと、あの星のように美しく輝くと思うんだ」


 その夜。

 僕の寿命は尽きた。


 幸成。

 いままでありがとう。

 キミのこと、忘れないよ。

 もし僕が人間に生まれ変われたら、仲良くしてね。

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