第4話 いざ、魔王軍討伐へ‼

 「それにしても不思議な国だな……」


 王宮の外に出ると、やっぱりこの国は今まで自分が見てきた国とは格別だった。元居た世界とあまり家の造りや着ている服などに変わりはないが……まさか国民全員魔法を扱える素質を持っているとは思いもしなかった。


 それに王宮内の物静かな雰囲気とは違い、王宮の外は活気で満ち溢れていた。まるでお祭りでも開催されているのか、と勘違いしてもおかしくないほどだ。


 こうして無邪気に笑い合うことができているのは、タリヤが国民全員に魔王軍が侵攻していることを知らせていないからである。


 しかし、なぜ魔法を扱う素質を持っているのに魔法を使わないのだろうか。楽しませるための魔法、移動を便利にするための魔法、自分を護身するための魔法などと様々な用途がある。

 

 だが、この国の人間たちはその魔法を使う気配がない。魔法を使えると自覚していないのか……それとも使い方が分からないのか……。


 どちらかは分からないが、この国の人間全員が魔法を使えるようになれば勇者を召喚しなくても魔王軍にある程度は抵抗できるようになっていたはずだ。


 ……ちょっと待てよ。その時、全身に稲妻のような衝撃が走った。


 魔法を使える人間が有象無象にいるなら、自らの手で勇者を育ててみるのも面白いのではないのかと。


 いつも俺は魔王として勇者が誕生するのを心待ちにしていた。しかし、何百年も俺の前に勇者が現れることはなかった。そのせいで、俺は退屈な日常を送ることになり、人間を滅ぼすことが面倒くさくなってしまったのだ。


 (まあ、半分は自分の性格によるせいでもある)


 勇者が誕生しなくては魔王と対等に渡り合える存在がいないのと同じである。しかし、それは俺の元居た世界での話である。今は置かれている状況が違う。


 この国の人間は魔法を扱える素質を持っている。つまり、自分の手によって魔王に匹敵する勇者を誕生させることができるのである。


 これが実現できたのなら、俺は退屈な日常を永遠に送らなくて済むのである。まさに、これは革命的な発想である。自分の才能が怖い。


 この計画は地に足をつけながら地道に進めることにしよう。とりあえず、魔王の幹部を倒すことを最初の目標にしよう。


 早速準備に取り掛かりたいところなのだが……ひとまず、この国を滅ぼそうとする魔王軍を討伐しないといけない。


 でないと、俺の目標を達成することは不可能になってしまう。個人的にこの国を守らなければならない理由ができたし、タリヤからの頼みでもある。


 魔王軍の事など一切俺の頭にはなかった。今は、どうやってこの国の人間を勇者として育てるべきなのか考えながら、俺は魔王軍討伐へと向かった。


 


 

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