第2話 遺伝子のいたずら?


 どうしてわたしだけずっとこんななんだろう?


 それがわたしの永遠の悩みだった。


 でも、誰もわたしの本当の気持ちなんてわかってくれないんだわ。

 

 わたし、何も好きでこの体型でいるんじゃない。ただ、親から受け継いだ遺伝子のせいなんだから……!


 あの頃はいつも、そんなことを考えてた。


  *  *  *


 斎藤美和子。それがわたしの名前。

 童顔だけど、小顔でよく整ってる方だよ、って言われて育った。女性っぽい体型じゃないわたしにとって、密度が濃くて量の多い黒髪は唯一の女の証。そこから覗く広い額は親譲り。「富士額(ふじびたい)」って言われたりもした。この言葉、若い人は知らないと思うけど。

 目もしっかり二重でパッチリと開いていて大きい。鼻は高すぎず低すぎず。鼻孔の角度もまずまず。口角を鍛えたおかげで作られるこのスマイルが、わたしのチャームポイントかな。体型はともかく、自分で自分の顔は好きでいられた。


 それで中学の学園祭で雑誌モデルにスカウトされたとき、受けてみようと思ったんだった。当時のわたしには、少しは光るものがあったのかな。


 大学に入ってようやく止まった身長は170cm。女子にしてはかなりの長身。しかし、その身長に対して体重が少なすぎた。


 上半身だけ見るとまるで痩せ細った中学生の男の子みたい。実際、口の悪い男の子から、キタローに出てくる妖怪人間のようだって言われたこともある。せめて少女マンガの「文学少女みたい」とか言って欲しかったんだけどね~。


 それくらい、ひょろ〜い体型のまま、縦にだけ伸びて大人になってしまったわたし。特に上半身の「痩せっぷり」は、自分としてはちょっと気持ち悪い。


 小さい頃からどちらかといえば細い体型だったわたし。中学の後半さらに伸びた背のわりに、増えて欲しい体重が一向に増えなかった。これこそ遺伝子のせいだと思ってる。


 わたしの父親は背が高くて痩躯な体つき。兄弟のうち、弟が似たような細身な体型の持ち主。これじゃあ太れないな、と諦めている気持ちもある。


 背が高いから、もっと大人っぽく見られてもいいはずだったのに。

童顔のせいなのか、大学後半になってもいつも高校生かそれ以下に見られていた。それはわたしに女らしさっていう魅力が欠けてるせいだと思うけど、ずっと幼く見られるのは正直とてもツラかった。


 そして、今年わたしは40歳になる。アラフォーになっちゃった。


 なのにコンプレックスはいまだにたくさんある。最大の悩みは、胸が今もってないこと。それも貧乳とかではなく半端なく「ない」。……だからかな、男の人と縁が薄い。この歳になっても、まともな男性経験がないという悲しい現実。実際、男の人って、女としてのわたしにはあまり興味ないんだと思う。


 20代半ばだった頃は、陰で「ジャンガジャンガ」ってあだ名で呼ばれてたことがある。そう、あのアンガールズにわたしの体型がそっくりだって話。

 でも反論しようにもできなかった。仕方ないかって思った。見た目は変えられないんだから。


 比較的裕福な家庭で、恵まれた環境で育ったせいか、わたしはわがままで、どちらかというと感情の波がある方だ。体調のせいもあるけど、気分が優れない日も多い。そんなとき、「何をそんなにふさいでるのよ?」と言われることがある。「ふさいでる」というより、人とすぐに比べてしまう悪い癖から抜け出せなくて考え込む、と言った方が正しいと自分では分析するんだけど。


 アラフォーの今でも悩みは尽きない。今でも若い頃の悪い癖が直ってない。


 生まれつきの「天然痩せ」のせいで、悩んだり焦ったりしてきた、ここまでのわたしの人生。なんとかここまでやってきた自分のことを、最初から振り返ってみようと思う。

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