第6話


 次の日、いつもより快眠で体力を完全に取り戻した僕はさっそく話を聞かせてもらうことにした。


「ふむふむ、なるほど……つまりマーナルムっていうのは、ある種の互助組織みたいなものなんだね」


 マーナルムは、ウィチタさんが作った子供や女の子などを助けるための互助組織。

 孤児達や身寄りのない子を拾い上げ、立派な大人に育て上げることを目的としているらしい。


 子供達に狩りの仕方や戦闘技術を仕込み、子がない家庭などに養子に出したりなんかもしていたそうだ。

 聞いている感じ、獣人における孤児院みたいな役割を果たすことを目指した組織らしい。


「マーナルムで純戦闘要員と言えるのは私だけ。それでもなんとかして皆の居場所を作ろうと頑張ってきましたが……争いの前に、私達は無力でした」


 順風満帆とは言えなくともそこそこ上手く回っていたマーナルムだったが、彼女達にある日悲劇が襲いかかる。

 当時マーナルムが身を寄せていた獣人の集落が、別の集落と争うことになったのだ。


 獣人達はグループ同士で争いをする。

 人数が少ないと言っても、それは紛れもなく小規模な戦争なのだという。


 そしてウィチタさん達女性陣にも参戦してくれるよう要請が来たらしい。


 ただウィチタさんに自分達の命を賭ける理由がないし、彼女達がいなくなれば子供達は再び居場所を失うことになる。


 それなら争いの火の粉が自分達に降りかからぬうちにと、彼女達は争いが始まるより前にこっそりと村を抜けて逃げ出してきたというのが、事の実情らしかった。


「こっちに来てたってことは、人間の暮らす場所へ来ようとしていたってことだよね?」


「はい、私達だけでは早晩限界が来るのはわかっていました。人間の暮らす場所にいってもどうなるかはわかりませんが、今のギギやバスタのところで暮らすよりはマシだろうと……」


 どうやら獣人の中にも色々といるらしく、マーナルムの行動範囲のところにいる里はあまり品行方正ではないところばかりらしい。


 だからといってマシなところへ行こうとすると距離が離れすぎているので獣人達の争っている場所を突っ切っていく必要があるが、警戒している獣人達の中を抜けていくというのも難しく……バナール大森林に来たのは、彼女達としても苦肉の策だったようだ。


「なるほど……」


 どうやらウィチタさん達も、なかなか大変な思いをしてきたらしい。

 パーティーを追放されただけでふてくされて森暮らしを始めていた自分が、なんだか恥ずかしくなってくる。


「とりあえずバナール大森林で暮らしているうちは、問題なさそうかな」


 獣人が暮らしているところまでの距離も教えてもらうことができた。

 かち合わないように気をつけておけば、まず会うことはなさそうだ。

 獣人達のルールで、人間の領域には踏み込まないようにというものがあるらしいから。


「それじゃあまず朝ご飯を作って……その後皆で動き出そうか」


 二十人もの大所帯で暮らすことは当然想定していなかったから、色々と準備も必要になるだろうからね。

 けど獣人の皆がいれば百人力だ。

 きっとあっという間に終わっちゃうはずだ。





 実際、ご飯の準備はあっという間に終わった。

 僕の調理の手際は大したことはないので、五人の頑張りの賜物である。


「私には調理(これ)くらいしかできませんので~」


 ちなみに一番手際が良かったのは、ゆるふわなイリアさんだった。

 おっとりとしたその雰囲気とは裏腹で、包丁捌きは圧巻の一言。

 というか早すぎて、気付いたら食材のカットが終わっていた。


 ご飯を食べ終えたら、まずは食料と水の調達だ。


 水の運搬は力持ちな獣人の皆に任せることにする。

 護衛にマリーとマックスをつけておけば、いざという時にも安心だろう。


 僕はジルとビリーと一緒に、昨日と同じく食料の調達に行く。

 今日明日くらいなら今あるものでなんとかなるけど、今後のことも考えるとしっかり食料を集めてこなくちゃいけないからね。

 僕と従魔だけで行こうと思ってたんだけど……


「私達も行きます!」


 と言われたので、ウィチタさんと、何人かの子供達が一緒に来ることになった。

 中では大きい子……具体的には成人少し前くらいの子が三人ほど。

 全員狩りのやり方は既にウィチタさん達に仕込まれていて、Eランクの魔物であれば相手取れるくらいの力はあるらしい。


 ただいざという時のことも考えて、拠点建築用の資材作りをしてもらうつもりだったシェフにもついてきてもらうことにした。


「よし、それじゃあ行こっか」


「任せてください、お役に立ってみせます!」


「「「みせます!」」」


 す、すごい気合い入ってるな皆……。

 肩の力を抜くよう告げてから、僕は気負わずに森へ出発することにした。










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