第23話 鷲の魔獣長ホーク③
『リアン! 起きて、リアン!!』
ステラの声で、リアンは気を取り戻したが、真っ暗で何も見えなかった。
「? どうなっているんだ?!」
『落ち着いてリアン! ここは地面の中よ』
ステラの一言で、リアンは、今の自分が置かれた状況を具に思い出した。彼は、深呼吸して気持ちを落ち着かせると、大地を突き破って、一気に地上へと躍り出た。
そこは砂漠で、直径数キロにも及ぶ巨大なクレーターが出来ていた。砂は焼け、あちこちから白い煙が噴き出していて、爆発の凄まじさを物語っていた。
(アポロンの鎧よ、あれだけの攻撃に良く耐えてくれた。ありがとう!)
リアンは、煌々と輝くアポロンの鎧の胸をポンポンと叩いて、感謝の意を伝えた。
空を見上げたリアンの肉眼には、上空に居るであろうホークの姿は見えなかった。そこで、心のセンサーでホークを捉えようと、空の彼方に意識を集中していくと、異様なエネルギーの気配が、確かに感じられた。彼は、ホークの正確な位置をと、更に神経を研ぎ澄ました。
『リアン、あのエネルギー波がまた来るわよ! 次、あれを受けたら危ないわ。ホークの位置は分かるの?!』
「……捉えました!!」
『ルーク様たちは避難しているから心配いらないわ。今すぐ最大パワーのフレアを撃って!!』
「了解!」
両足を前後左右に開き、踏ん張ったリアンは、両手で握りしめた星の剣を、両脇を絞るようにして天に向け、大きく息を吸い込んだ。
「フレア―ッ!!!」
リアンの叫びに呼応するように、星の剣の先端部分から、途轍もない炎が拡散しながら天に向かって噴き上がった。その反動で、踏ん張ったリアンの足がズンと地面に減り込んだ。
それと同時刻に、遥か上空のホークも止めの一撃を放っていた。
「双玉爆波!!!」
天上から撃ちおろされる紫のエネルギー波と、地上から吹き上がる超絶火炎のフレアが激突して、凄まじい閃光が空を染めた。
相打ちかと思われた超絶エネルギーの鬩ぎ合いは、フレアが紫色のエネルギー波を打ち砕き、天空のホークを一気に吹き飛ばした。
「この俺が負ける? だと……アーロン……さま……」
ホークの身体は一瞬で焼き尽くされ、再生することは無かった。
「何という凄まじさなんだ……」
地上では、まだ腕が痺れる感覚が残っているリアンが、星の剣の刀身を見ていた。
『リアン、先を急ぎましょう。もうあまり時間が無いわ』
「はい!」
ホークとの闘いの勝利の余韻に浸る間もなく、ルークたちと合流したリアンは、高速飛行でルピナス国上空へと急いだ。
「ホークほどの魔獣がやられるとは……」
ルピナス城の王の間では、魔法の玉で、ホークの戦いを見ていたアーロンが、肩を落としていた。黒騎士軍団四天王のホークは、彼にとって最も信頼できる一人だったのだ。
「どういたしましょう。新たな鷲の魔獣を送りますか? それとも私共が向かいましょうか?」
四天王である、黒ヒョウ軍団の魔獣長ジャガーが、アーロンの顔色を伺いながら尋ねた。
「……」
何も言わぬアーロンに、ジャガーが更に続ける。
「リアンたちが向かっているのは、伝説の魔法具師ノアの所です。部下の情報によりますと、彼らが遭遇するのはルピナス国の上空、つまり、この城の上なのです。リアンが更に強力な魔法具を手に入れれば、大変なことになります。何としてもリアンを止めねばなりません」
「それよ、儂もそのことを考えていたのだ。
ノアは、エンゼルハートと言う強力な魔石を持っているそうじゃ。それは、我が魔石サタンハートにも劣らぬ力があると聞く。そしてもう一つ、タイムリングと言う時間を旅する魔法具のことも、前々から気になっておる。タイムリングが現実に存在するなら、それを手に入れた者がこの世界を支配できるはずだ。断じてリアンに渡してはならん!
ネーロ、鷲の魔獣軍団を召喚せよ! 全軍出陣じゃ!!」
『承知!』
アーロンの指示を受け、黒猫ネーロが喋った。どうやら只の猫では無いらしい。ネーロが大きな伸びをして、音も無く部屋の出口へと向かうと、アーロン、ジャガー達もその後に続いた。
彼らが宮殿前の広場に顔を出すと、数百名の黒騎士軍団が一斉に奇声を上げて出迎えた。
皆が見守る中、広場の西側の城壁に飛び上がったネーロが、城の外側に向かって天空を睨む。その左目からサーチライトのような光が放たれると、巨大な黒の魔法陣が上空に投影された。
やがて、その魔法陣から鷲の魔獣軍団が姿を現した。彼らは、広場に舞い降りると、半魔獣化した黒騎士軍団のスネーク隊、ジャガー隊、マンモス隊を数人づつ乗せて、続々と空へ舞い上がった。
黒い魔法陣は、召喚魔法陣だったのだ。黒猫ネーロは、アーロンの魔法具なのかもしれない。
半魔獣軍団を乗せた鷲の魔獣の大編隊は、リアンが向かって来る空域へと、更に高度を上げた。
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