金曜日夜にしか会えない紅葉と

みかさやき

第1話

2024年6月21日


 ゆらゆらゆらゆら。気がついたら、ベッドの中にいた。


 ゆっくりと身体を起こして、スマートフォンを取り出す。6月21日6時ちょうど。多分というか絶対夕方。朝の6時なんてことはありえないはず。


 時間を確認したら、ベッドから降りて鏡の前に立つ。今着ているのは黒色の半袖ワンピースで、靴下は水色。靴下は記憶にないから、もしかしてべにはが新しく買ってきたものかもしれない。半袖ワンピースは見たことがあるような気がするから、前からあった物だと思うけど。


 脳は酷使されたように疲れが残っていて、目や肩が痛い。でもいつもよりも疲れ度合いが少ないので、体調的にはちょっとましかもしれない。


 とにかく起きたので、部屋から出る。部屋の中の物は多少変わったような気がするけど、基本的には何も変わらない。ていうか部屋の中にある物に興味が私はないから、どうでもいいのだけど。


「夕占(ゆううら)さん、おはよう」


 同居人の夕占さんはリビングでテレビを見ている。


「おはよう。もみじ今起きてきたの? 夕ご飯食べる?」


「うん、食べる。そういえば今日は夕占さんの誕生日だよね、おめでとう」


 そう今日6月21日は、夕占さんの誕生日だ。夕占さんは私よりも年上で、確か今日で30歳になるはず。


「ありがとう。そうそうあたしの誕生日祝いとかでべにはが有給休暇を取って、夕ご飯作ってくれた。確かカレーと回鍋肉」


「べには料理作ってくれたんだ、すごい。でもカレーか、先週みたいにびしゃびしゃじゃないといいけど」


 先週夕占さんはキャベツと小松菜のカレーを作ってくれたのだけど、それが見事に水分過多だった。ごくごく普通のカレールーを使っているはずなのにスープカレーに負けないくらい水っぽいカレー、美味しかったからいいけど今も印象に残っている。


「大丈夫。べにははそこまで冒険しないから、ちゃんとカレーになっているはず」


 夕占さんはキッチンで、カレーが入っていると思わしき鍋を見はじめた。


「まあべにはだしね、大丈夫かな」


 べにはは料理に凝るイメージがないから、説明書通りにカレーを作るはず。そこでオードソックスなカレーができているかもしれない。


「うん大丈夫。じゃあ夕ご飯にしよう」


 夕占さんがカレーと回鍋肉を温めて、私はお皿を並べたりごはんをお皿にいれたりする。


「「いただきます」」


 準備ができたら、2人でご飯。


 カレーは先週のしゃぶしゃぶした感じが全くなくて、とろみやこくがある王道の味。回鍋肉も味がしっかりとついていて、美味しい。


「そうだ誕生日ということはケーキもべにはは用意してくれたの?」


「そうそう。ショートケーキを買ってきてくれたらしいよ」


 べにはは気が利く。夕占さんの誕生日だから、ちゃんとケーキ買ってくれたんだ。


「うれしいな。ケーキを食べるの久しぶりだから」


 以前ケーキを食べたのは私の誕生日だから、2から3ヶ月くらい前になる。


 だからこそケーキを食べるのは、久しぶりだからうれしい。ほんとうのほんとにね。

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