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 これからCDを手に入れられないかもしれない。そのショックが残るけど、私は書店の中をぐるぐる回る。


 気になった本を手に取り、レジでお金を払う。レジにもアニメイトで売ってあった『薬屋のひとりごと』のパンフレットがあり、かなり有名なイベントなんだなと思う。


 書店での買い物を終えると、駅へ向かう。駅も人が多くて混んでいる。ICカードで改札を通り、電車に乗る。電車の中には日本語じゃない言語を話している人が多くて、ここは日本なのか疑問になる。でも電車の中はよく見ている近鉄だし、広告で使われているのは日本語。すなわちここは日本の電車であっている。


 そんな外国の人も乗っている電車に乗って、大和西大寺で乗り換える。大和西大寺駅からさっきよりも空いている電車に乗り、最寄り駅へと向かう。


 お土産屋へ行って、アニメイトへ行って、書店へと行って。


 観光地として有名な近鉄奈良駅の近くで、それ以外のところへ行かないのはもったいないかもしれない。本当は世界遺産に登録されているお寺、話題になっているお店。そこにも行った方がいいかもしれない。


 でも混んでいるから仕方ない。人で混んだ町はいるだけで疲れるから、長くはいられない。そこでどれだけ素敵なところでも、長くいられるわけがない。


 昔はそうじゃなかった。大学生の時は夢風ひろばで大仏プリンソフトクリームを食べること、夜に燈花会や瑠璃絵を見ることもあった。


 でもさ今は仕方ない。そしてこれからも仕方ない。


 最寄り駅につくと、電車から降りる。今までと比べものにならないくらい人の少ない駅を、私は慣れたように歩く。改札から出たらそのまま近くにあるスーパーに入り、夕ご飯の買い物をする。


 夕ご飯の買い物が終わってから、家まで歩いて帰る。バスで帰りたいけど、多分かなり待つことになるから、その分時間がもったいない。駅から家まで行くバスはよく混んでいるけど本数が少ないしなんならバス路線自体なくなりそうって話しなので、頼りにはならない。そこでちょっと遠いけど、歩いて帰った方がマシってことも多い。


 背中のリュック、肩にかけた鞄はさっきまでに買った物がつめられてずっしりと重い。それらの重さにたえつつ、私はなんとか帰宅した。


 どこかに出かけることも難しく、例え今日みたいにでかけていたとしても疲れる以外の何物でもない。


 これはもう仕事をしているから仕方ない、仕方ない。仕事をしているのに、楽しく外出をするなんてこと、夢でもありえない。


 それに仕事をしていたら、人と関わるのも辛いだけになる。仕事をしていたら、他人は敵だし頼りにはなれないってこと、誰でも学ぶはずだ。だから休みの日も他人と関わるのはやめようって思うから、仕事をしている限り誰かと一緒に外出も出来ないと思う。


 まあこういうのは仕事をしているからしゃーない。仕事で人生を消費するのが普通。仕事が辛くて、仕事以外も辛いのが普通。そう辛いしかないのが人生だ。

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