scene3 : 待ち合わせ
◇
「アカネ、よっ!」
「…ん、…おお」
「まだ俺達だけかー」
駅の駐輪場には茜が先に来てた。
日陰の花壇のフチに、座るようにもたれか掛かって、ペットボトルのレモネードを飲んでいる。
「あぁ、ペケは来るん初めてやから、先に案内とか紹介とかだけしとこー思て」
それで、他の人は後で来るんだと説明される。
話を聞くと、この間の三人の他にもメンバーがいるんだとか。
茜と朝園と一緒に居れるような人か………どんな人なんだろ?
楽しみなような、怖いような…
茜に連れられるまま自転車を押して歩いてる途中のこと。
さっき茜に近づいた時からひとつ気になってた事があって…ちょっと気後れしながらも聞いてみることにした。
こういう事を聞くのもどうかとは思ったんだけど、放っておくのもモヤモヤして…
「なあ…茜ってさ…」
「…? なに?」
「もしかしてタバコ吸ってる…?」
「は?? 」
こいつって思った通り結構不良っぽいし…もし吸っててもしっくりきちゃうんだよな…
「いや吸ってないわ」
「ん、そっか………」
それ聞いて安心した。
吸ってたらどうしようかと思った…ただの勘違いだったか。
「急にどうしてん?」
「え? あ〜……まぁ…吸ってないなら別に…」
「は? ……なんや歯切れ悪いな。ええから言いーや」
「そうだよね………うん…あの~……」
「さっき会ったとき…結構、香水キツめだなって思ってさ…匂い消しのためなのかなって…」
「…っ!!! はっ…はあっ??! 」
しまった、と思った時にはもう遅い。
茜はみるみるうちに頭に血をのぼらせ、今にも殴りかかってきそうな勢いで声を荒らげる。
やべ……っ
「別にキツないわ!! きっっっしょ! ハーッ?? しねボケ!」
「ごめん! そんなにキモかった? わるかったって! 俺が悪かった!」
そこまでダメだったのか…デリカシー無かった…?
悪いことしたな…って…!
「あぶっ!! ちょ待った! ごめんって! 暴力は止めよ?!」
「ボケェ!! ……んのボケェ!!」
「ごめん!! マジでっ!! あ゛ぁっっい゛!!」
ダメダメダメダメ! やっばい!
この人やっぱ怖いよ! 危なすぎる…!
◇
「………………」
「…………」
「……ちっ………………」
「……………………ぅす……」
で………オートロックのマンションに辿り着いた。
ここに着くまでになんとか…うっすら不機嫌、くらいにまで機嫌を直してくれた茜は、手慣れた感じで鍵を開ける。俺達は403号室に入っていった。
「…お邪魔します。おー…! ここって……茜さんの家?」
「いや、ウチのんじゃない。先輩のやねんけど、使わせてもらっとんねん」
「え…! いいの? 鍵とか持っちゃってるじゃん!?」
「一応言うとくけど…パクっとるとかちゃうからな? ちゃんと本人から預かっとる鍵やで?」
「マジか! 」
先輩の家か…一人暮らしだよね? いいよなぁ一人暮らし。
「え、茜さんの彼氏的な…?」
「ちゃうわっ!」
「うぉっ…? ……そっか…?」
「先輩が学校行く時に使う家やねんけど、まー、忙しくて結構空いとんねん。やからその間は使ってもええって話」
「え……その先輩って……!」
「おお、ウチの学校の有名人の、あのパイセンや。知っとるやんな?」
「そりゃ知ってるよ! え、マジ?あの人 の家、自由に使わせてもらってんの? ヤっバ!」
「ええやろ? ウチらの秘密基地やで」
「アがり過ぎでしょそれ…!」
「やろ? まあ、適当に座りーや」
あの先輩って、あの、 ”俳優の先輩” か!
今、高三だよね! そういえば入学式の日に先輩いたなー。
あの人と、しかも結構親密な繋がりがあるって、茜さん……すっげー!
先輩の部屋は広めのワンルームで…そこに、ウッドフレームの二人掛けソファ、ゆったりした一人掛けソファ、オットマンが、それぞれ一台ずつと、
あとは人を駄目にしそうなクッションが置いてあった。
この溜まり場感、見るからにただの一人暮らしの部屋じゃない。あとベッドは無い。
そういう配置と、各々が持ってきたっぽいよく分からない雑貨?とかがもう、The 秘密基地! って感じですげえワクワクする!
「ほい」
「え? ありがと!」
茜がレモネードをコップに注いで持ってきてくれて、なんかそれも嬉しかった。
「なんやねん子供みたいやなぁ、はしゃいでもうて、かわいいなぁ〜!」
「うっせ! だって良過ぎだってこの部屋! こういうの憧れだよな〜!」
なにこれ…こんな…俺のことクラブに誘ってくれてマジで感謝だわ…!
よく分からないクラブとか思ってたこと、心の中で謝っとこ…
「ハハハ…………ふふっ……。
……………ペケ。……記念に写真でも撮るか?」
「え? 撮ってくれんの?! 頼む!」
どこにしよっかな…座るとこいっぱいあるのに一人だからポツンってなっちゃうよな〜!
「…………」
「え? あの、はいスマホ…茜?」
「……………………………チッ…………撮るんそこでええん」
「え? あぁ、んん…あ〜〜〜〜んじゃあここで! 頼む!!」
「サンニーイチはぁい」
「はやっ!」
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