第2話 …… 作戦のintroduction
scene1 : 登校時間
◇
「なにやっとん? ペケ」
もうすぐ朝のチャイムが鳴るぐらいの時間かな?
アカネは遅刻前ギリギリ組の一員として登校してきた。
相変わらず派手な柄のシャツで、やたらと目立ちながら。
みんなが教室に向かうルートからちょっと外れたこの場所まで、わざわざ寄ってきて、ちょっかいでもかけに来たらしい。
「よっ! なんかもう一人の人が怪我したみたいでさあ、代わりにちょっと手貸してたんだわ」
「いやほんっと助かった! ありがとう! ほら、ジュース何でも好きなの言いな、せめてもの礼ね!」
重いものの片側を持ったりとかなんやかんや、補修工事するおっちゃんをちょっと手伝ってたところだった。
もう時間だし、手伝いは終わりにしてジュースを選ぶ。
「ラッキー!あざーす!」
「あぁ、そういやなんか言うとったな。この辺危ないから近寄んなみたいな」
「今日で直るってよ! あ、それじゃ行きますんで! ジュースあざっしたー!」
「おーーう! ありがとーーう!」
「へへ、ジュース奢ってもらっちゃったわ」
「…………ジブンお人好しやな………相変わらず…」
「そうかな………って…相変わらず? そういうの今までなんかあったっけ?」
「………いや…別に…」
…何この謎会話?
そのままの流れで、茜と一緒に歩いていく。校舎に入って、自分のクラスに向かって…
「そういえば…何組なの?…アカネ…ちゃん?」
「はあぅわ!? きっしょっっ!!!! 『ちゃん』とかつけんなや!」
「えぇそんなに?!」
今まで心のなかではアカネ、アカネ、って呼び捨てにしてたけど、いざ本人を呼ぶってなったら流石に馴れ馴れしいかなって思って…。
それでちゃん付けしてみたら、拒否反応ヤバ。
「じゃあ苗字何?」
「名前で呼べばええやろ苗字なんかないわそんなもん!」
「ははは!なんでだよ!」
苗字…言ってたっけな…?
まあいっか…
「ならまあ……あかね…って呼べばいい…?」
「何照れとんねん…」
「いやさ…いきなり女子のこと名前呼びするの、結構気恥ずかしいって…」
「ぷっ…ハハ…なんやそれ」
階段を登って曲がって、一年の教室が並ぶ廊下を歩いていくと、周りが顔見知りばっかりになっていく。
うわー…何かこの中で茜と一緒に歩いてんの、すごい変な感じだわ。
「あ、俺のクラスここだから」
「おう。んな、また…」
俺は3組の教室前で止まる。
ってことは、アカネは3組よりは向こうのクラスらしい。
それと朝園は4組なんだけど、向こうの方から丁度、朝園が歩いてきてるのが見えた。
今回に限っては見とれてたとかじゃなくて、なんとなく。あ、朝園と茜が挨拶するなー、って思って、ほんのちょっとだけ立ち止まったままでいた、その一瞬後…
朝園と茜、二人は目も合わさずにすれ違った。
ドキっとした。
二人、お互いに声もかけず、全く関わり合う素振りも見せずに…
それから、朝園は友達と一緒に4組の教室に、茜は5組の教室に入っていく。
「えぇ…?」
なんか分からないけど心臓がドクドク鳴ってる。
結構混乱してる…何だったんだ今の…?
何より一番困惑したのは、今のが……当たり前の光景に思えてしまうことだった。
この前、二人仲良さげに話していたあの光景の方が、ウソだったみたいに思えてしまった…
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