第2話 …… 作戦のintroduction

scene1 : 登校時間


「なにやっとん? ペケ」


もうすぐ朝のチャイムが鳴るぐらいの時間かな?

アカネは遅刻前ギリギリ組の一員として登校してきた。

相変わらず派手な柄のシャツで、やたらと目立ちながら。


みんなが教室に向かうルートからちょっと外れたこの場所まで、わざわざ寄ってきて、ちょっかいでもかけに来たらしい。


「よっ! なんかもう一人の人が怪我したみたいでさあ、代わりにちょっと手貸してたんだわ」

「いやほんっと助かった! ありがとう! ほら、ジュース何でも好きなの言いな、せめてもの礼ね!」


重いものの片側を持ったりとかなんやかんや、補修工事するおっちゃんをちょっと手伝ってたところだった。

もう時間だし、手伝いは終わりにしてジュースを選ぶ。


「ラッキー!あざーす!」

「あぁ、そういやなんか言うとったな。この辺危ないから近寄んなみたいな」

「今日で直るってよ! あ、それじゃ行きますんで! ジュースあざっしたー!」

「おーーう! ありがとーーう!」


「へへ、ジュース奢ってもらっちゃったわ」

「…………ジブンお人好しやな………相変わらず…」

「そうかな………って…相変わらず? そういうの今までなんかあったっけ?」

「………いや…別に…」


…何この謎会話?


そのままの流れで、茜と一緒に歩いていく。校舎に入って、自分のクラスに向かって…


「そういえば…何組なの?…アカネ…?」

「はあぅわ!? きっしょっっ!!!! 『ちゃん』とかつけんなや!」

「えぇそんなに?!」


今まで心のなかではアカネ、アカネ、って呼び捨てにしてたけど、いざ本人を呼ぶってなったら流石に馴れ馴れしいかなって思って…。

それでちゃん付けしてみたら、拒否反応ヤバ。


「じゃあ苗字何?」

「名前で呼べばええやろ苗字なんかないわそんなもん!」

「ははは!なんでだよ!」


苗字…言ってたっけな…?

まあいっか…


「ならまあ……あかね…って呼べばいい…?」

「何照れとんねん…」

「いやさ…いきなり女子のこと名前呼びするの、結構気恥ずかしいって…」

「ぷっ…ハハ…なんやそれ」


階段を登って曲がって、一年の教室が並ぶ廊下を歩いていくと、周りが顔見知りばっかりになっていく。

うわー…何かこの中で茜と一緒に歩いてんの、すごい変な感じだわ。


「あ、俺のクラスここだから」

「おう。んな、また…」


俺は3組の教室前で止まる。

ってことは、アカネは3組よりは向こうのクラスらしい。

それと朝園は4組なんだけど、向こうの方から丁度、朝園が歩いてきてるのが見えた。


今回に限っては見とれてたとかじゃなくて、なんとなく。あ、朝園と茜が挨拶するなー、って思って、ほんのちょっとだけ立ち止まったままでいた、その一瞬後…


朝園と茜、二人は目も合わさずにすれ違った。


ドキっとした。

二人、お互いに声もかけず、全く関わり合う素振りも見せずに…

それから、朝園は友達と一緒に4組の教室に、茜は5組の教室に入っていく。


「えぇ…?」


なんか分からないけど心臓がドクドク鳴ってる。

結構混乱してる…何だったんだ今の…?


何より一番困惑したのは、今のが……当たり前の光景に思えてしまうことだった。

この前、二人仲良さげに話していたあの光景の方が、ウソだったみたいに思えてしまった…



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る