第2話

引原村ひきはらむらでは年一回、お盆の時期に村内にあるお寺で人形供養が行われる。

お寺の境内にはたくさんのお人形やおもちゃがところ狭しと並べられてあった。

「おめめ、こわい」

おばあちゃんにしがみつくと、

「いいか、ちこ。ものを大事にせんとバチが当たる。だからな、粗末にしてはなんねぇぞ。ちゃんと供養してやんねぇと祟られる」

「うん、わかった」

「供養するつもりで持ってきたが、これはちこにやっぺ。ママが小さいときから大事にしていた人形だ。ちこのお父さんに気味が悪い。捨てろと言われてちこのママがばあちゃんのところに持ってきたんだ。ママのことを思い出すから捨てっぺと思って持ってきたけど、これはちこが持ってろ。いつかきっとおめさんを守ってくれる」

おばあちゃんが紙袋から取り出したのはロボットみたいな形をした、兵隊さんの格好をしたお人形だった。緑色の服を着ていた。

「これはくるみ割り人形だ」

「ありがとうおばあちゃん。大切にするね」

私は両手で人形をぎゅっと抱き締めた。


当時の記憶が曖昧でよくは覚えていないけど、執拗に追い掛けてくる黒い影から必死に逃げ回った私は、コンビニエンスストアの店員さんに助けを求めたみたいで、その後お巡りさんに保護されたあと、お母さんの実家に預けられた。


おばあちゃんも、おばさんの真侑さんも、真侑さんの夫であるおじさんも私にとても優しくしてくれる。可愛がってくれる。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る