第21話 俺、勝利のコールを浴びる
見事、勇者を打ち破った俺と姉ちゃんに拍手が巻き起こる。
そしてシエルが勝利のコールを上げた。
「こ、これは……まさかの大逆転勝利! 勝者残虐非道な奴隷使いネオ!!」
「こいつマジでやめろよな。その二つ名みたいなやつ」
「何か言いました?」
「べっつに~」
無事勝利した俺と姉ちゃん。
これも姉ちゃんが大蛇を引き付けてくれていたからこその結果だ。
やっぱ姉ちゃんには助けられてばかりだな。
だからこそ……この力はあの時誓ったように姉ちゃんを守るために使う。
「では今大会見事優勝を果たしたネオさんにお話を伺おうと思います。優勝されましたが今のお気持ちは?」
「これもすべて俺に力を貸してくれた皆さんのおかげです。隣りにいる姉ちゃん、学園長、唯一の友達であるサラにこの勝利を捧げたいと思います」
「うお~お姉さんを奴隷にされる割にはしっかりとした回答ありがとうございます」
「余計な一言だと思いますが、ありがとうございます」
で、俺のインタビューは終わった。
次に司会者が目を向けたのは、隣りにいる姉ちゃんだった。
さっきから妙にそわそわしてるが、大丈夫だろうか?
「では続いてお姉さんにお話を伺います。このたび、弟さんが見事優勝されましたが、今のお気持ちは?」
「えっと、カッコよかったその一言ね。お姉ちゃんはネオ君のこと信じていたし、ネオ君もお姉ちゃんのこと信じてくれた。相思相愛だったって話ね」
「その、姉弟の話ではなくて優勝したお気持ちを……」
「失礼な司会者ね。お姉ちゃんはもうネオ君と家に帰ります。夕食を食べたあと、チョメチョメしないといけないの」
何を言うかと思えばとんでもない発言をしてくれたぞ、俺の姉ちゃんは!
これはまた荒れる予感……。
「ふっざけんなよ! 優勝したからっていい気になりやがって!!」
「何がチョメチョメだ。羨ましい! 童貞、変われや!」
「まさか姉弟で主従プレイするのか!? しちゃうのか!?」
もう意味がわからん、この世界は。
みんな頭のネジ吹っ飛んでるんじゃないか。
「姉ちゃん荒れてきたから帰ろう。なあ?」
「うん、晩ご飯何がいい? 今日はお祝いね」
そんな感じで魔剣大会は幕を閉じた。
最初から最後まで前途多難で常に何が起きるかわからない状況だった。
しかしあの後、学園長から緊急の連絡が入った。どうやら勇者ヤクモが出血多量で意識が回復することなくそのまま死亡した、らしいのだ。
それが不服でならないルーゼルフ王はもっと強大な力を持った勇者を召喚すべく模索中のようだ、と。勇者があのような形で命を落としたのは、ルーゼルフ王のせいでもある。
そういう意味では彼もまた被害者なのだろう。
そして俺が一番気にしていたユリアナの件なのだが……俺の予想がハズレることを願っていた、が無様な敗北をしたとオブリージュ家を追放されたらしい。
正式な跡継ぎは、妹のシンシアに決まり、今や貴族でも何でもないユリアナの身分は平民以下へと成り下がった。
身分を失くした者がどうなるか、それはどんな上流階級の者であっても奴隷へと落とされる。
その後はお察しの通り、肉体労働をさせられる労働奴隷として買われるか、夜の世話――性奴隷として買われるか、そんな感じだ。
だったら俺はどうなのかって話だが、一応魔国に籍を置いている、という形になるらしい。
学園に入学できたのも、この国に滞在できるのもすべて現国王代理の学園長のおかげだそうだ。
バレてろくでもないことにならなければいいが……。
*
翌日、俺は学園長室に訪ねた。
そこで話したのは、もちろん魔剣大会後の話。
「会長が奴隷に落ちた、その話は?」
「事実よ」
いつからか立場が逆になった。
学園長は魔王が復活したと思ったらしいが、最初は戸惑っていた。
けど、力の源である【殲滅剣オーバーウェルム】を見て、なぜか俺にひれ伏した。
本人が言うには悪魔に根付いた性質のようなものらしいが、俺自身は人の上に立つような立派な主でもなければ、その資格はないと思っている。
だから今までの関係がいいって説明したら了承してくれた。ほんと話がわかる人でよかったよ。
俺ってそういう種族をまとめる器じゃないからさ。いや、これは単なる逃げだと非難する人もいるだろう。
しかしほんと俺には無理なんです。
そういうの勘弁してください。
てな、感じで心の中ではもう叫びっぱなしです。
「姉ちゃん……会長を」
「うん、ネオ君の好きにしていいと思うよ」
「ありがとう姉ちゃん」
姉ちゃんは相変わらず姉ちゃんって感じだ。
でも、そんな姉ちゃんでも最近変わったことがある。「お姉ちゃんは王妃ね」なんてことをよく呟いているのだ。言葉の意味からして俺と結婚する気満々らしい。
うん、まあ、前から知ってたけど。
でも俺はするつもりはないし、というより姉ちゃんだし。けど、本人にそれを伝えたらショックを受けて、どっかに旅立ってしまうかもしれないから、あえてそういう話になってもすぐにはぐらかすようにしているのだ。
さっきの話に戻るが、ユリアナの件を姉ちゃんは好きにしていい、と言ってくれた。
だったら今やるべきことは……。
悩んだ末、俺は自分が正しいと思う、その気持ちを信じて進み続けることに決めた。
―――――――
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