第61話061「のじゃロリギルマス櫻子ちゃん直属クラン」



「さて、実はのぉ⋯⋯本題はこれからなんじゃが」

「「「「え?」」」」

「え?」


 櫻子ちゃんの言葉に、俺も4人も驚きの反応を見せる。


 え? 今のが本題じゃない?


「今回、オメガと『戦乙女ヴァルキュリー』の4人には『魔法』の情報隠蔽に協力してもらうために、あること・・・・をしてもらう」

「「「「「あること?」」」」」

「結論から言おう。『戦乙女ヴァルキュリー』とオメガ⋯⋯お主らでクランを結成する!」

「「「「えっ?! オメガ君(様)と⋯⋯クラン?!」」」」

「しかも、ワシ『直属のクラン』ということでな」

「何? 櫻子ちゃんの? やります」

「「「「「おいっ!!!!」」」」」


 あるぇ〜⋯⋯おかしいな〜?


 櫻子ちゃんの言葉にただ脊髄反射して肯定しただけじゃないか〜。


「なぜだ? なぜ、そこで全員からツッコまれる?」

「即答が気持ち悪い」

「即答が気持ち悪いです」


 櫻子ちゃんは怪訝な顔をし、『戦乙女ヴァルキュリー』の4人は生ごみにわくウジを見るような目を向ける。


「あざーす!」

「褒めてない」

「褒めてません」


 のじゃロリと美少女4人からジト目と侮蔑を込めた言葉を投げつけられた。


 まったく⋯⋯ご褒美しかないじゃないか。


「おい、オメガ⋯⋯お主、人の話をちゃんと聞いておるか? 何かお前の態度を見てるとワシの苦情そっちのけな感情を抱いているようにしか見えんのじゃが?」

「キノセイデス」

「はぁぁ⋯⋯まあよい。とにかく、そういうことじゃ」

「い、いや、そういうことって!? さ、櫻子様! 私たちが櫻子様直属のクランになるって⋯⋯私たちたかだかC級探索者シーカーのクランですよ?! 正直、櫻子様の直属クランになる実力には程遠いので辞退させてください!」


 亜由美さんがそう言って櫻子ちゃんに辞退を申し出た。しかし、


「ダメじゃ。さっきも言ったがこれはお願いではない、命令じゃ」

「し、しかし⋯⋯」

「たしかにお主の言っていることもよくわかる。じゃが、今回の『直属クラン』の真意はこのバカチンのやらかした『諸々もろもろ』の隠蔽のためじゃ」

「「「「⋯⋯あ」」」」

「え? 俺なんかやっちゃいました?」


 ジト⋯⋯。


 あ、みんなの視線が痛い。ありがとうございます。


「正直『戦乙女ヴァルキュリー』の4人は、今回の『直属クラン』の話はこのバカチンの完全なとばっちりということじゃ」

「そ、そんなぁ〜⋯⋯」


 亜由美さんが悲痛な声を上げながら俺を睨んでくる。


 ご、ごめんなさい⋯⋯。


「とはいえ⋯⋯じゃ! それではあまりにも4人が不憫じゃからワシに良い考えがある!」

「「「「良い考え?」」」」

「お詫びとして、お主らのダンジョン探索にこのバカチンオメガを同行させ、お主らのレベルアップに貢献させるのじゃ!」

「「「「えっ?!」」」」

「え? 同行?」



********************



「オメガの強さについては、お主らはすでに把握しておるじゃろ? ちなみに、これはここだけの秘密じゃが、こいつはワシの見立てではS級探索者シーカー以上の実力を持っておる」

「え?」

「は?」

「S級⋯⋯以上?」


 櫻子ちゃんの言葉に有紀さん、渚さん、琴乃さんがポカーンとほうけながら反応する。


「へ〜S級。⋯⋯誰が?」

「お主が、じゃ!」

「うおっ!?」


 ほんの軽い冗談を繰り出したら、櫻子ちゃんがだいぶ本域の掌底を繰り出した。ちなみに、それまともに食らったらタダじゃ済まないやつですよ?


 のじゃロリ櫻子⋯⋯恐ろしい子!


「で、でも、だって⋯⋯オメガ君はダンジョンでまだF級探索者シーカーになったばかりって⋯⋯鉄の登録証をぶら下げながら言ってましたけど⋯⋯」

「ああ、そうじゃな。たしかにこやつはF級探索者シーカーになったばかりじゃが、元々S級以上の実力を持っておった⋯⋯という話じゃ」

探索者シーカーになる前からS級以上⋯⋯の実力? ダ、ダンジョンに入る前から、どうしてそんな強さを身につけているんですか、この人ぉぉぉ!!!!」


 ズビシ!⋯⋯と、亜由美さんが俺を指差しながら半ば発狂気味に櫻子ちゃんに物申す。


 亜由美さん、人に指差すのはいけないんだぞ。


 あと、頬に物理的に指差さってんぞ。


「んん〜⋯⋯まぁ、そこはまだここでは一旦伏せておく。とにかくじゃ! とにかく、そういったわけでお主らにはオメガと帯同してレベルアップを図り、一気にA級探索者シーカーになってもらうのじゃ! これは命令じゃ! 拒否権はないのじゃ! よいな⋯⋯なのじゃ!」

「うっ!? は、はい⋯⋯」


 色々取り乱して質問をぶつけた亜由美さんだったが、最後は櫻子ちゃんが半ば強引に話をまとめた。さすがに亜由美さんもこれ以上は何も言うことはできなくなり、結果そのまま櫻子ちゃんの指示を飲み込むことで決着した。


 あれ? ところで俺への意思確認は?


 え? 始めから無い?


 あ、そっすか。


 さーせん。



********************



「し、失礼します⋯⋯」

「「「失礼しまーす!」」」

「うむ」

「それじゃあ、また」


 俺と櫻子ちゃんで『戦乙女ヴァルキュリー』たちを見送る。


「さて⋯⋯やっと二人きりになれたな」

「優しくしてね⋯⋯ぬおっ?!」


 ブオンっ!


 ちょっとウィットに富んだ冗談を言っただけなのに、またもシャレにならないレベルの掌底を放たれた。


「えっと⋯⋯櫻子ちゃん? 掌底ソレ、軽く死ねる威力よ?」

「大丈夫じゃ。そのつもりで放っておる。勘違いではないから心配ないのじゃ!」


 あ、そっすか。⋯⋯ひぇ。


「で? 何で俺だけ残したんです?」

「ワシの『空間転移ジャンパー』でダンジョンからここに転移したことで、お主も気づいておるじゃろ⋯⋯結城タケル・・・・・?」

「あ⋯⋯」


 バレテーラ。

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