第54話054「戦い終えて」



「お、落ち着きましたか?」

「は、はい。一応⋯⋯」


 さっきまでガクブル状態だった四人を何とか落ち着かせようとタケルは必死に弁明。しばらくして、やっと落ち着きを取り戻した頃合いで、改めてタケルは挨拶をする。


「初めまして。オメガと言います」

「わ、私は、亜由美です。このC級クラン『戦乙女ヴァルキュリー』のリーダーをやっています」

「ええっ!? C級クランのリーダー! す、すごい!!」


 C級探索者シーカーのクランでリーダーだなんて⋯⋯かなりの実力者じゃないか。たしか理恵たんがD級探索者シーカーって言ってたから、それよりもさらに上のレベルの探索者シーカーってことなんだよな。


「私は有紀。えーと、あの『喋る魔物』に吹っ飛ばされて気絶していたから、君が助けに来たことをすぐには知らなかったよ。ごめんね」

「い、いえ、そんな⋯⋯」


 何か有紀さんってハキハキ喋るから『姉御肌』って感じだな。だいぶ肝が据わっているように見える。


「私は渚よ。正直、君のその強さは異常すぎるから、今後も『喋る魔物』として扱う所存よ。よろしくね」

「いや、よろしくねじゃないですよ!?『喋る魔物』じゃないですから!」

「あはは⋯⋯冗談よ、冗談。それにしても君って面白いね。仮面かぶって『オメガ』ってキャラを演じているみたいだけど、ところどころに素が出てるから気をつけたほうがいいよ。たぶん、視聴者さんたちも気づいているだろうし」

「ええっ?! そ、そうなんですか!」

「あはは、でも私は良いと思うわよ」

「そんなぁ〜⋯⋯」


 渚さんは我が道を行くみたいな自分をすごい持っている人だな。『天真爛漫』って言葉が似合う人だ。


「わ、私⋯⋯琴乃と言います。あの⋯⋯凄いですオメガさん! 尊敬します!!」


 そういうと、150センチ前半くらい⋯⋯と身長の低い琴乃さんがズイっと下から上目遣いに見ながらそんなことを言ってきた。あ、すげーいい匂い。


「あ、ありがとうございます⋯⋯」

「特に、あの『喋る魔物』のバロンが私たちに放った大きな火球を一瞬で氷結させたのが凄かったです! あれが『魔法』というものなんですか! 魔法って他にもあるんですか?! スキルとは何が違うんですか?!」

「あ、いや、その⋯⋯」


 な、何か、すげぇグイグイくる?! こ、怖い!!


「ストップ! ストーップ! お、落ち着いて、琴乃!!」

「はうあっ!? し、ししし、失礼⋯⋯しましたぁぁぁ!!!!」


 一瞬我を忘れた琴乃がタケルに怒涛の質問責めをしたが、亜由美に止められ我に返ると一気に顔を紅潮させ亜由美の後ろに引っ込んだ。


「ご、ごめんなさい⋯⋯オメガさん」

「い、いえ、大丈夫ですよ⋯⋯ハハ」

「あ、でもさー⋯⋯確かに君のさっきの魔法の話は聞きたいな」

「ゆ、有紀?!」

「私も! ていうか、それ以前にオメガ君あんた何者? どうしてこんな強いのにこれまで無名だったのよ?」

「渚まで! やめなさい、二人とも! オメガさんが困ってる⋯⋯」

「何よ! 亜由美だって本当は知りたいでしょ、オメガ君のこと?」

「っ?! そ、それは⋯⋯」

「はい、バレバレ〜」

「はい、わかりやす〜」

「も、もう!」


 有紀と渚に揶揄からかわれる亜由美。


「てことで、質問タ〜イム!」


 と、ここでいきなり有紀が声を上げる。


「じゃあまずはオメガ君は⋯⋯あ、『君』でいいのかな? とりあえず歳はいくつ?」

「え? え〜と、じゅう⋯⋯」


 あ、マズイ。さすがに年齢はマズイ。


「あ、いや⋯⋯年齢は不詳ってことで。あ、でも、別に『オメガ君』でいいですから」

「そう? わかった。それじゃあ次は⋯⋯」

「ちょ、ちょっと待って、有紀!」

「何よ? ダメよ亜由美、良い子ぶっちゃ? あんただっていろいろ聞きたいでしょ?」

「違う! そうじゃなくて配信! 配信!」

「え? 配信?」


 亜由美の言葉に他の3人がDビジョンアプリで配信を確認した。すると、


——————————————————


:うぉぉぉ! オメガ様、ありがとうぉぉ!!

:オメガ様ってすごい強いですね!

:魔法って何ですか?!

:オメガ様って東京出身ですか?!

:何歳ですかぁぁ!

:好きなタイプのおにゃのこはぁぁ???

:オメガ様は本当に強いって私信じてましたぁー!!!!

⋯⋯

⋯⋯

⋯⋯

⋯⋯


——————————————————


「チャ、チャット欄が、すごいことになってる!?」

「え? ど、同接⋯⋯78万っ!?」

「あ、あわわわ⋯⋯チャンネル登録者数が50万人超えてるぅ〜(震え)」


 有紀、渚、琴乃が三者三様のリアクションを見せる。


「どうしたんですか?」

「チャット欄のコメントがすごい勢いで流れてるのよ! チャンネル開設当初にこういうことはあったけど、ここまでのコメントの勢いは初めてよ! しかもチャンネル登録者も元々20万人くらいだったのに、今日だけで一気に30万人増えて50万人超えてるしっ!?」


 亜由美さんが興奮気味に早口で捲し立てる。


「え〜と⋯⋯つまり、バズってるってことですか?」

「「「「大バズりよっ!!!!」」」」


 4人が物凄い形相で状況を伝えてくれた。こ、怖い。


「す、すごいですね⋯⋯」

「凄いなんてもんじゃないわよ! ていうか、オメガ君もDストリーマーやってんでしょ? ならそっちも大バズりしているはずよ!!」


 渚がそう言ってタケルにDビジョンアプリで配信を見るよう伝えると、


「いえいえ、俺のチャンネルは今チャット機能オフにしてますから」

「えっ?! ど、どうして⋯⋯⋯⋯あ!」


 そこで渚が気づく。


「あーーーー! 思い出したぁー!『オメガ様』だぁーっ!!」

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