第40話040「Dストリーマーオメガ2回目配信(もはやツッコミがいない無法地帯となった件)」
「えっと⋯⋯こ、こんにちわ。オメガです。今日は衣装をリニューアルしてみました、どうでしょう?⋯⋯つってもチャット機能はオフなのでとりあえず報告ということで」
そう言って、俺は黒装束の衣装を纏い仮面を付けた姿を視聴者にお披露目した。ちなみに黒装束とはいっても実際はただの黒のスラックスに黒の長袖シャツを着ただけだが。
あ、それと黒マントも用意した。やっぱマントはマストだよね!
あと、仮面もつけているのだが、その仮面は『デスマスク』のような白の仮面だ。目・鼻・口に少し穴が空いている。
「フフフ⋯⋯かっこいいでしょ? これがDストリーマーオメガの完全体⋯⋯真の姿です! 先週のオメガは不完全体、
ビシッ!
俺は昨夜必死に考えた決めポーズとキメ顔でそう言った!
フフフ⋯⋯決まった。決まってしまった。
やっべ!
これ、たぶん一世を風靡したんじゃないかな?
あ、もしかしたら明日にも俺の格好をマネしたい
これはいけない。ちゃんと伝えておかなければ!
「あ、もしこの格好マネしたいのであれば全然構いませんからね!」
ふぅ〜、よしよし。
まーこの格好は男子なら誰でも憧れるはずだからね。それを俺が独占なんてするわけがあるだろうか、いやない!
まったく、ここでもまた懐の深さをアピールしてしまったな。
いや〜それにしてもやっぱこの『オメガ完全体』の感想を視聴者さんから直接聞きたいよな〜。ちょっとだけチャット機能をオンに⋯⋯い、いやいや、それはダメだ! ちゃんとチャンネル登録者数が加速して増えるタイミングでオンにするって決めたじゃないか!
まーでも、今回のこの『オメガ完全体』でもしかしたらチャンネル登録者数爆増するかもな(ニチャァ)。
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「そんなわけで、衣装もリニューアルして気持ち新たに⋯⋯ダンジョン探索開始ですっ!!」
そうして、俺は下層の砂漠地帯を歩き出した。
「え〜と、ここは現在、新宿御苑ダンジョン30階層『下層入口』で砂漠地帯なのですが、いや〜暑いですね〜。それにしてもダンジョンの中なのに太陽がギンギンに照りつけているとは何とも不思議な空間ですね〜」
俺は下層の雰囲気を伝えながら、視聴者を意識したナレーションをしていく。フフ⋯⋯昨日の段取りどおりうまくいってるな。
「ここからは『下層』なので今までとは比べ物にならない程の強い魔物が出てくるでしょう。危険と隣り合わせなのは十分承知している。だが、俺は
と、ドローンカメラに向かって真剣な表情で想いを訴える。
フフフ⋯⋯完璧だ、完璧な演出だ! これだよ、これぇ!
「ここから『下層』は魔物が強くなる」という演出⋯⋯迫真の演技だったのではなかろうか?
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「あ、暑ぅぅ〜!!!!」
『新宿御苑ダンジョン30F(下層入口)』⋯⋯ダンジョン養成講座で聞いた通りの砂漠地帯。なので、めちゃめちゃ暑い。ちょっと歩いただけでダラダラと汗が出る。
ちなみに、その前の『中層』は森林地帯だったので涼しかった分、この下層からの砂漠地帯はキツイ。
「しかし、まぁ不思議だよな〜
端的にいうと、例えばこの新宿御苑ダンジョンの下層が『砂漠地帯』というのは、ここだけの話ではなく、世界各地にある『101階層以上のダンジョン』はすべて下層は『砂漠地帯』となっている。つまり共通しているのだ。
あと『101階層以下のダンジョン』の場合も同じだ。例えば『1階層が中層スタート。最深部が49階層という下層までのダンジョン』でも『エリア環境』自体は『中層なら森林地帯』だし『下層なら砂漠地帯』となる。
「まぁ、共通してる分、覚えやすいし対策もしやすいのはいいよな〜。それにしてもこういったエリア環境が共通していたり、
実際、魔物も
「お?」
通路の奥から5体の魔物が目に入る。見ると、ゾンビ状態のオーク⋯⋯『デスオーク』の群れだった。
「あ、あれは?! デスオーク!!」
俺は魔物を見つけると、ギリっと唇を噛み締め「強敵が現れた!」を
「う、うおおおおおおおおっ!!!!」
俺はガムシャラ必死な感じでデスオークに突っ込み拳で殴る。すると、
パーーーーン!
あ、あれ?
だいぶ手加減したつもりだったのに、また
いかーーん! それ今やっちゃいかんやつ〜〜〜っ!!!!
すると、周囲のデスオークたちが俺の
「ラ、ラッキーだった!? ぐ、偶然デスオークが破裂するとは! き、きっと『破裂する急所』に俺の攻撃が当たったのだろう! いや〜本当にラッキーだったなぁ〜!」
ちょっと苦しいか? いや、でもどうせチャット機能はオフにしているんだから誰かに辛辣なツッコミを言われることはない。なので安心。
「ち、ちくしょう⋯⋯強敵のデスオークがまだ残り4体もいるなんてぇ! まさに絶体絶命じゃないかー!」
などと、俺が危機的状況なセリフを言うや否や、
ダダダダダっ!
目の前にいたデスオークの群れが全力でその場から逃げ去った。
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「く、苦しい戦い⋯⋯だった」
俺はデスオークがいきなり全力で逃げたのを
「ふぅ、恐ろしい。これが30階層⋯⋯『下層入口』!」
俺は一滴も出ていない額の汗を
「これからは慎重に探索を続けなければ⋯⋯」
そう言って、俺はさらにダンジョンを慎重に歩く。そして、それからも魔物は頻繁に現れるので俺は全力な
「何か、疲れたな〜」
俺は先週と同じく魔物の強さに合わせながら戦っていたため、次第に面倒臭くなってきた⋯⋯ので、
「恐ろしい魔物に出くわさないよう、ここからは走っていきます!」
と、魔物が怖いから急いで突っ切ろうという装いでさっさと下層から出ようとダッシュした。そして、
「49階層⋯⋯下層の終点か」
俺は下層入口から
「ふ〜ん、下層の最深部って神殿の中になるんだな」
下層最深部も、てっきりまた砂漠かと思ったが降りていくとそこは神殿の中だった。だいぶ広い。
「つ、ついに階層ボスのいるところまで来ました。怖いですが勇気を振り絞って挑戦したいと思います!」
俺は必死の形相を
さてさて、下層の階層ボスはどれくらいの強さかな〜。少しは演技しなくてもいいくらいには強いといいな〜。
そんなことを考えながら、階層ボスの部屋を探していると、
「きゃああああ!」
女性の悲鳴が聞こえた。
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