第25話025「俺プロデュース」
お昼前——駅前の有名ハンバーガーチェーン店へ。
正直、お昼時なので中では食べられないかと思ったが、行ってみると奇跡的に空いていたので俺は中で食べることにした。
ポテトとドリンクがセットになっている『ハンバーガーセット』を注文した俺は、2階の奥のテーブルへ行き腰掛ける。
「モグモグモグ⋯⋯さて
俺はハンバーガーを口に運びながら今後の自分のダンジョン探索について思考する。
そう、俺はこれから
「『異世界帰りの英雄は能力活かして無双する』? それとも『異世界帰りの英雄は力を隠して成り上がる』? フッフッフ⋯⋯まさにリアル版ラノベタイトル選びって感じだな」
タケルが主人公らしからぬ不敵な笑みを浮かべる(ニチャァ)。
********************
「よし、これでいくか!」
ということで、俺はノートに書いて今後の
——————————————————
「これからこんな探索者を目指す」
候補1:正体
候補2:正体隠して無双
——————————————————
「ふむ、こんな感じか。で、まずは候補1⋯⋯」
最初は定番の『正体曝け出して無双』。
いわゆるオーソドックス。王道スタイルといったところか。
「う〜ん、これなら確かにすぐに有名になるんだろうなぁ。でも、それだとすぐに生活に支障をきたすんだろうな〜」
そう、王道スタイルとはまさにド派手に目立つスタイル。まー目立つのは正直ドンとこいではあるのだが、目立つということは敵を多く作ることに他ならない。そうなれば、
「家族に迷惑をかけることになるだろうな」
ということで、候補1は却下。
続いて、候補2だが、
「正体隠して無双か〜。それだと俺自身は無名のままだ。それはそれでどうなのだろう?」
俺自身が無名のままなら日常生活は維持される。当然家族にも被害が及ぶことはない。
「しかし、そうなると『Dストリーマー』の配信活動はいかがなものか?」
『Dストリーマー』
これはドローンカメラを使って
これまでは、
さらに、このDストリーマー活動のおかげで人気者になった
そんな事情もあって、現在巷では「
「この『有名Dストリーマー』の中に、雨宮さんも入っているということか。すごいな⋯⋯」
その後、俺は手元のスマホで有名Dストリーマーの配信をいくつか観てみた。
「へ〜、Dストリーマーの配信って、必ずしもダンジョン探索だけってわけでもないんだな〜」
もちろん、Dストリーマーの8割はダンジョン探索の配信がメインだが、一部の
「さて⋯⋯そんなわけで、これから
『倒した魔物で料理』、これは異世界でもやっていたのでできないこともない⋯⋯が、
「しかし、この世界のダンジョンの魔物って
という不安がだいぶある。それに、
「そもそも俺は料理ができないからな〜。
よって、料理は無理ゲー。
「アイドル活動? ないないない」
はい、却下。
「ちょっと待て? こんな話をする前に、そもそも正体を
振り出しに戻る。
********************
——10分後
「よし、決めた。正体は隠していこう!」
日常生活に支障をきたすのは無しというのが決め手となった。
「あと、無双するのも色々どうかと思うので、
この判断については「顔を隠しているなら別にいいじゃん?」と脳内会議の第3の俺が囁いたが、
「だからといって無双して目立つのはやっぱり敵を作ることにもなりかねないし、あと俺の正体を探るものが増えてくる懸念もある。そうなると、いろいろと厄介事が増えるのは確実」
ということで、第3の俺の意見は却下となり『そこそこ無双』で行く判断の一つとなった。しかし、一番の決め手となったのは、
「そこそこ無双で魔物を倒せばそれなりに盛り上がるだろうし、それで中堅クラスのDストリーマーにでもなればサラリーマンの3倍近い稼ぎになる⋯⋯とネット記事で書いてあった。それだけ稼げば俺や妹たちの大学費用や家の生活費には十分だろう」
ちなみに、中堅クラスのDストリーマーとはチャンネル登録者数でいうと10〜30万人で、配信の同時接続数(同接数)だと2千〜5千人規模となる。
「同接2千から5千とか、はっきりいってこれだけの人が配信を観てくれるのであれば、俺の承認欲求なんて余裕で満たされるっつーの!」
ということで、俺は『そこそこ無双』でやっていくことを決めた。
「か、完璧だ! これ以上の完璧な計画があるだろうか、いや⋯⋯ない!」
俺は自身のセルフプロデュースの才能に震える。
「フッフッフ、いいぞ俺。プロデュース完璧だな」
と、一人ニヤニヤしていた俺にOLさんたちが「うわぁ」とドン引きの眼差しを向けていた。
「さて、あとは正体を隠すための『変装』だが、どうしよう?」
変装か〜。あんまりゴテゴテしいのはなぁ〜、準備も変装も面倒臭そうだし。
「まー、別に顔がわからなけりゃいいからサングラスとマスクでいいか。あ、でも服装はどうしよう?」
今の俺の格好は青のチェック柄の長袖シャツにジーパンという出で立ち。服装に特に関心はないし、この格好がラクなのでいつも好んで着ている。妹たちには「タケル兄ぃ、お願いだからもう少し服に関心を持って!」と散々なことを言われている。
しょうがないじゃん、だってラクなんだもん。
「ま、いいか、このままで。いつもの格好のほうが動きやすいし」
だんだんと考えるのが面倒臭くなってきた俺は、結局この格好のままでサングラスとマスクだけを着けて変装することを決めた。
「よし、それじゃあサングラスとマスクを買ったら、さっそく新宿御苑ダンジョンにデビュー戦といきますかぁ!」
俺がそう叫びながら立ち上がると、さっきのドン引きしてたOLさんがいよいよ店員さんを呼びに行ったようなので俺は全力でその場を後にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます