第19話019「クラスメイトと親しく?なりました」
ジィィィィィィ⋯⋯!
「⋯⋯え?」
気づくと、教室の男子だけでなく女子も含めたクラスメイト全員が俺に強い視線を向けてきた。
え? 俺、何かやっちゃいました?(鈍感系主人公? いやいや、そんなバカな)
しかし、ただ視線を向けるだけで何も話してこない。
何〜? 何なの〜?
ということで、『さがえもん』を呼んでみた。
「お〜い、さがえも〜ん」
「だ、誰が『さがえもん』だ、コラー!」
さがえもん、こと佐川が俺のところにすっ飛んでくる。
「ねぇねぇ、さがえも〜ん」
「俺はさがえもんじゃねぇ! 佐川だ! ていうか、知ってるだろこの野郎!」
「あれ? 取り巻きビッグ3は?」
「ああ! 取り巻きビッグ3だぁ?!⋯⋯ああ、あいつらか。あいつらは退学したよ」
「え? そうなの? 何で?」
「いや、何でじゃねーだろ! お前が追い込んだんだろうが!」
「いや、でも別に普通に元気そうだったじゃん?」
「んなことねぇよ! あんな
ああ⋯⋯
「佐川は? 佐川は何で学校やめなかったの?」
「やめるわけねーだろ! たしかにお前に追い込まれてめちゃめちゃ心が病みそうになったが、たぶん、
「へ〜、そうなんだ」
あの時、他の奴らに比べて佐川にはかなり『威圧』をかけたはずなんだけど⋯⋯。佐川って思ったよりやるかも?
「まー今さら追い込んだ俺が言うのも何だけど、やりすぎたかもって少し反省はしてる」
「っ!? ばかやろ⋯⋯何でいじめられてたお前が謝るんだよ」
「! 佐川⋯⋯」
「俺たち⋯⋯いや俺が全部悪いんだから、お前が謝る必要なんて1ミリもねーだろが! ふざけたこと言ってんじゃねーぞ」
「⋯⋯」
ま、まさかの、ツンデレ属性!?
「だ、誰がツンデレ属性だ、コラァ!」
あ、心の声が漏れてた〜ん。
ていうか、佐川も頬染めてツッコむな。このくだりでそれはシャレになってないぞ。
「んなこたぁどうでもいいんだよ! 何で俺を呼びつけたんだって聞いてんだ、コラ!」
「あ、ああ。ごめん、ごめん。実はさっきからみんなが俺のことジィィっと見てるから何事かと思って⋯⋯」
「はぁぁ?! お前、気づいてないのかよ!」
「えっ?! 佐川は気づいてるの?」
「当たりめぇだろ! ていうか、お前以外のみんなはそれでお前のことを見てんだよ!」
「え? え? お、俺、マジで何かやったの?」
え? 何か俺、力使った? いや、そんなわけ⋯⋯。
「⋯⋯さっきだよ」
「え?」
「さっきお前に声かけた女子がいただろ?」
「え? あ、ああ⋯⋯雨宮さん?」
「そうだ、雨宮理恵だ。お前本当に知らないのか?」
「だ、だから、何がだよ!」
「あいつは俺と同じ高校生
「えっ!?」
な、何ぃぃ! あ、あの、今の黒髪ロング美少女が
「しかもただの
「は、はぁぁぁっ?!」
う、嘘だろっ!? D級⋯⋯って、それって佐川よりも2つ上の階級ってことじゃん?
「この学校には俺と雨宮とあともう一人3年の先輩の⋯⋯計3名の
「マ、マジ?! ていうか、うちの学校って意外と高校生
「ああ、他の学校に比べれば多い方だろうな」
それにしても、さっきの雨宮さんがD級
「で、何でそんな彼女と話しただけでこんな騒ぎになってんの?」
「⋯⋯おかしいんだよ」
「え? 何が?」
「
「は? はぁぁぁぁ???」
な、何よ、どゆこと? わけわかめぇぇ!
********************
「え? クールジャパン?」
「何で雨宮が、クールと捉えられるその可能性あるもの含む日本の魅力を伝える奴になんだよ!」
おお、なんと流暢で的確なツッコミ。
「クールビューティーだ、クールビューティー! あいつは普段誰とも気軽に話すような奴じゃないんだよ」
「ええ?! だって、さっきは普通に喋ってたぞ? しかもどちらかというと向こうが積極的に⋯⋯」
「だから、みんな驚いてんだよ!」
「な、なるほど」
佐川の話によると、彼女は普段『近づくなオーラ』を放って周囲とめちゃめちゃ厚い壁を張っているとのこと。『A⚪︎フィールド全開』らしい。
「雨宮とお近づきになりたいって奴はごまんといるからな。でも、あいつは普段はキッとしていて近寄りがたいからみんな遠目で見ているだけなんだよ。そんな雨宮がお前にあれだけ自分から接するなんてかなり異常なことなんだよ」
「マ、マジっすか⋯⋯」
「それにな、雨宮の人気は学校を飛び越えているからな? お前もしかしてそれも知らねえだろ?」
「はい。ちっとも知りません。おせーて、さがえもん」
「さがえもん言うな!⋯⋯ったく。あいつはな、チャンネル登録者数40万人超の有名Dストリーマーだ」
「ええっ?! でぃ、Dストリーマー! それって、ダンジョン配信者ってこと?!」
「ああ、そうだ。それもあって雨宮と友達になりたいって奴は大勢いんだよ」
何と! 彼女、Dストリーマーだったんだ!!
俺が異世界に転移前は佐川くらいしか
「ね、ねぇ、二人とも⋯⋯」
「何だよ」
「何?」
突然、数人の男子と女子が話に入ってきた。
「あ、あの、雨宮さんのことも驚いたけど、あ、あんたたちって仲良かったの?」
「「え?」」
「いやだって、お前ら⋯⋯ていうか、佐川って結城のこといじめてたよな?」
あ、そうか。そう言えば、こうして佐川と話すのって初めてだったな。
「そ、それは⋯⋯」
「今はもう仲直りしたよ」
佐川が言いづらそうにしていたその横で俺が男子生徒の質問に即答する。
「え、そうなの!?」
「そうそう。な、佐川?」
「え? い、いや、俺は⋯⋯」
「佐川〜?」
「ひぃぃ! お、おう! そ、そうだ。仲直りした⋯⋯よ」
おおおおお!
佐川の言葉を聞いて、クラスの連中が一斉に声を上げた。
「よかったな〜結城」
「⋯⋯」
正直、「手のひらくる〜ですかぁ?」と一瞬腹立たしくなったが⋯⋯しかし、しかしである。
もはや、俺に佐川に対して負の感情はない。ていうか、佐川ってちゃんと話したら意外と面白い奴ってこともわかった。
それに残りの学園生活を諦めていた俺にとって、クラスメートからの接触は『良い機会』だと思ったので、俺は頭を切り替えた。少し調子の良い話かもしれないが俺はこの好機に全力で乗っかった。
「ありがとう、みんな! これからは気にせず気軽に話してかけてくれ」
「わかったわ」
「おう、そうさせてもらうぜ」
うんうん、いじめられた時のことなんてもはや過去の話。君たちのことも許してあげようじゃないか。マリアナ海溝より深い愛を持ってね。ふふん、俺って器がデカ広いぜ〜。
「よかった、よかった。では⋯⋯結城タケル君」
「はい?」
いきなり数人の男子と女子が俺を囲むとガッと腕を捕まえられた。
「⋯⋯今度は、
「ひぃぃ!」
目の焦点がおぼつかない奴らが俺を教壇のほうへと引っ張り立たされる。そして、
カッカッカッカ⋯⋯!
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『クールビューティー様弾劾裁判』
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男子生徒の一人が黒板に『クールビューティー様弾劾裁判』とチョークで乱暴に書き殴ると、
「これより『クールビューティー様弾劾裁判』を執り行う。被告人は真実を述べるように」
と、なぜか裁判の被告人扱いで壇上に上げられる羽目になった。
うちのクラスメートは、俺の想像以上に『クセつよ』集団なのかもしれない。
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