だから、それは何?12


「あいあい」


「おばあちゃん、飲めるんだ・・・」


「ウイスキーは飲むのよ。嫌いらしいけどね」


──どういうこと?あえて聞きはしないが。




早坂さんは重厚感のある立派なロックグラスでウイスキーを作ってくれた。わたしの量が半分なのに対して、おばあちゃんのグラスには氷無しで並々と注がれている。大丈夫なのか?

乾杯後、おばあちゃんはそれをゴクゴクと一気に半分まで飲み、わたしは口に含んだウイスキーをグラスに戻しそうになった。


「ちょっ、おばあちゃん!一気に飲み過ぎだよ!大丈夫!?」


おばあちゃんは水でも飲んだかのように涼しい顔をしている。


「うん、まずい!」


「まずいって・・・それなのに飲むんだ」


「雪音も早ぐ飲め!」そう言って残りの半分を飲み干す。見ているこちらが酔いそうだ。


「言ったでしょ美麗ちゃん、人間はアルコールを一気に摂取出来ないって。美麗ちゃんみたいに飲んだら身体壊しちゃうわ」


「そうが!ダッハッハ!遊里、おかわり!」


早坂さんはテーブルに置いたウイスキーをまた並々とおばあちゃんのグラスに注いだ。

これ、国産のかなり高価なウイスキーだけど。


「おばあちゃん、酔わないの?」


「酔うわよ。いつだったか1本空けた時は、その辺に唐辛子撒き散らしてキッチンのキャビネットの中でウイスキーの瓶と寝てたわ」


「・・・プッ」その姿を想像して可笑しくなった。おばあちゃんならキャビネットの中にも入りそうだ。


「まったぐ覚えてねえ!ダッハッハッ!」


「だからこの1杯で終わりよ美麗ちゃん」


「わがった!まずいからもういらねっ!」おばあちゃんはソファーから身軽に飛び降りると、テレビ台の引き出しから何かを物色し、わたしの元へ持ってきた。


「あ、トランプ?」


「んだ!雪音、出来るが!?」


「うん、出来るよ。やる?」


「ババ抜きだ!やるべ!遊里もな!」


「やっぱりやるの?」と、早坂さんは苦笑いだ。「この前教えたら、ハマっちゃってね。2人でやってもつまらないって言ったら、雪音ちゃんが来たら一緒にやるって張り切ってたのよ」





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