だから、それは何?7
2回目の早坂邸。前回来た時も十分に驚いたが、今回もまたそれを隠せない自分がいた。
「雪音ちゃん?どうしたの?」
玄関先で立ち尽くすわたしの耳元で早坂さんが囁いた。
「いえ、相変わらず立派だなと。ていうか、近いです」
早坂さんは背後霊のように背中にピタリとくっついている。
「ほんとそうよねえ。一人暮らしにはもったいないわ」
「・・・わたしも、こんな家に住みたいな」
何気なく言ったつもりだったが、早坂さんが背後からわたしの顔を覗き込んだ。
「いいわよ、一緒に住む?」
早坂さんの顔はわずか数センチ前で、少し動けば唇が触れそうだった。
「さっ、おばあちゃんに挨拶挨拶」
動揺を隠しながら玄関へ進み、早坂さんが開けてくれるのを待った。
「何してるの?」 早坂さんはわたしより後ろにいる。
「何してるのって、鍵開けてもらわないと」
「開いてるわよ」
「えっ!」 驚いて確かめると、本当に開いている。
「鍵、閉めないんですか?」
「ええ、閉めたことないわ」 早坂さんはしれっと言った。
「・・・不用心すぎでは?」
「そお?美麗ちゃんもいるし、気にしたことないわ」
── おばあちゃんもいるしって、普通の人には見えないじゃん。
人の事危機感が足りないって怒るくせに、自分もでは?
「なあに?その顔」
「いえ別に。世の中物騒ですから、鍵くらいはかけたほうがいいと思いますよ」
「まあ、そおね。次からかけるわ」
たぶん、かけないだろうな。この言い方は。
「さ、入って入って」
早坂さんに背中を押されるように中へ入り、玄関ドアが閉まると、それと同時に奥の部屋の扉が開いた。ひょこっと顔を覗かせる小さな人物。
「あっ、おばあちゃん!」
「雪音、来たが!」
おばあちゃんは齢を感じさせない軽い足取りでわたしの元へ駆け寄って来た。
「久しぶりだね、元気?」
「ガッハッハ!オラァこの通り元気だ!雪音も元気そうだな!」
久しぶりにおばあちゃんの豪快な笑い声を聞いて、自然と笑みが溢れた。
「うん、わたしも元気だよ。会いたかった」
「そうがそうが!オメーはいづ見でも、ベッピンだなぁ!」
「ふふ、ありがとう。おばあちゃんも可愛いよ」
「そうが?ガッハッハッ!」
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