だから、それは何?8


ふと早坂さんの顔を見ると、目を細めてわたしを見ている。何か言いたそうだ。


「なんですか?」


「ふん、あたしには会いたいって言ったことないのに。美麗ちゃんにはそんな笑顔で言うのね」


イジけモードだ。


「ダッハッハッ!ふてくされでだぞ!雪音、遊里にも言ってやれ!ベッピンだって!」


「そうですね、早坂さんは綺麗です」 それだけは紛れもない事実だ。


早坂さんはハアと肩を落とした。「そんなの嬉しくないわ。どうせあたしは女顔よ」


「美形って事じゃないですか。わたしは好きですよ、早坂さんの・・・」言いかけてハッと停止した。今、普通に好きって言ったよな、わたし。いや、ここで止まったらダメだろう。顔がって、あくまで顔がって言わなきゃ。早坂さんはジッとわたしを見ている。


「早坂さんの・・・?」 早坂さんが返事を急かすようにわたしに1歩近づく。


「早坂さんの・・・容姿が!」


早坂さんはまた目を細め、さらに肩を落とした。「遊里、ぜんぜん嬉しくな〜い」


「なんでですか、容姿が良いに越した事はないですよ」


ここで終わると思ったが、早坂さんは更にわたしに近づき、顔を寄せた。


「容姿だけ?」


──いや、近いから。


「いや・・・容姿だけというわけじゃ・・・」


「じゃあなに?」


「・・・なにって、何を言わせたいんですか・・・」


「あなたの本音よ。さあ、あなたはだんだん言いたくな〜る〜」


これ以上縮められないほどの距離に早坂さんがいて、それどころではない。


「本音って・・・」言いかけて、思った。それ、わたしの台詞では?圧をかけてくる早坂さんの目をジッと見つめた。「早坂さんは?」


「え?」早坂さんは言葉の通り、キョトンとしている。


「早坂さんは・・・・・・わたしの事、どう思ってますか」


最後が聞き取れるかわからないほどか細くなってしまったが、早坂さんには聞こえたようだ。

虚を突かれた顔をしている。わたし自身、自分の口から出た事に驚いている。


早坂さんは少しの間わたしを見つめると、ニコリと笑い、いつものように頭に手を乗せた。


「可愛くてしょうがないわ」


──たぶん、それも嘘ではないんだろう。


でも、わたしが聞きたいのは──・・・「それだけですか?」

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