対峙7


「では、それを踏まえて本題に入ろう。単刀直入に言うが、妖怪の仕業だと思われる事件が立て続けに起きている。そこにきみ達で行って確認してきてほしいんだ」


「そうだとは思ったが。事件とは?」


「とある公園で、利用した子供達が相次いで怪我をしているんだ。被害にあった子供の話によると、こうだ。滑り台で遊んでいたら、突然誰かに背中を押された。ブランコを漕いでいたら、何かに背中を引っ張られた。砂場で遊んでいると、突然足に痛みを感じ、確認するとそこには引っ掻き傷があった。そして子供達が口を揃えて言うのは、"誰もいなかったのに"」


「話だけ聞いてれば、間違いなさそうね」


「ああ、幸い死者は出ていないが、確認を急いだほうがいい。その近くには頼める人間が誰もいなくてね、少し遠くなるが宜しく頼むよ」


「場所は?」瀬野さんがメモを取る為、携帯を出した。


財前さんが襟元から紙を取り出し、テーブルに広げる。

「ここから100キロほど南下した所にある、湯石町(ゆせきちょう)という小さな町だ。そこにある、これは・・・なんて読むべきか」


「蓮子向(はすむかい)。蓮子向公園です」


3人が一斉にこちらを向く。


「雪音ちゃん、知ってるのかい?」


「子供の頃、住んでいた場所です」


「・・・そうか。それはまた、不思議な巡り合わせだね」


驚くより先に、拒絶が来た。──あそこに、行くのか、わたし。


「中条、前に、ガキの頃住んでいた近所の公園で妖怪が友達に怪我をさせたって言ってたよな?」


「はい、わたしもそれを言おうと思ってました」


「その公園かい?」


「そうです。耳が生えた、小さな女の子でした」


「引っ掻き傷だろ。お前が見たその化け猫かもしれんな」


「・・・あの、妖怪って、同じ場所にずっと居続けたりするんですか」


「そうだね・・・そうである奴もいれば、そうじゃない奴もいる、かな。化け猫は縄張り意識があるからね、あまり移動はしないはずだが。こいつのように転々と移動する奴もいる」そう言いながら、財前さんは自分の右腕に触れた。あの、アザがある場所を。



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