対峙8


「・・・そうなんですか」


「でも、被害の報告は最近になっての話よね?どうしてかしら」


「そこに居るのが、雪音ちゃんが見たという化け猫と同じだとすれば、年月を経て凶暴化している可能性もある。もしくは、別の何かか・・・」


「なんにせよ、確かめる必要があるという事だな」


「もう1つ、聞きたいんですが、妖怪はその・・・成長するんですか?歳をとるという意味で」


財前さんは袖に腕を通し、何か考え込んだ。

「そうだね、それに関しても、両方だ。そのままの姿で生き続ける者もいれば、人や別の妖怪を喰らい大きくなる者もいる。妖怪によって、成長するスピードや具合が違うんだ。申し訳ない。僕も長年生きているが、明確な事は言えないんだ」

笑ったあとに伏目がちになるのも、やっぱり、財前さんだ。



「それで、いつ行く?」


「・・・アンタはもう少し会話の流れを読みなさいよ」


「何がだ。今、一旦区切りがついただろう」


「その区切りを読めって言ってるの」


「ここでとやかく言ったって、行って確かめない事には何もわからないだろう」


「その通り、その通りだけど、よ」


「そうですね。行って確かめないと」みんなにというより、自分に言い聞かせた。


早坂さんの手が一瞬、頭に触れる。これは、なんのポンだろう。


「明日にでも行ってみるか?急いだほうがいいだろう」


「あたしは構わないけど、問題は時間よね。子供達が遊ぶ時間に現れるなら、明るいうちに行っほうがいいかしら」


「そこを縄張りにしてるなら、夜でも現れるんじゃないか。昔俺んちで買ってた猫は夜になると活発に動いてたぞ」


「そりゃあ普通の猫の話でしょうが。まあ、確かに、子供達が居ない時のほうが動きやすくはあるわね」


「しかし、移動時間を考えると中条の仕事が終わってからでは、ちと微妙だな。今回は2人で行くか?」


「休みます」


「そうか。遊里、何時にする」


「えっ!いや、違くて!仕事を休むってことです!わたしも行きます」


「無理しなくていいのよ?」


横目で早坂さんを睨んだ。この人は、ただ連れて行きたくないだけだ。


「大丈夫です。人も増えたので」一真くん、明日はバイトに入るんだろうか。早急に確認せねば。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る