天然記念物につき2


「この前はデートだったわけ?」


「無視かい。だから、違うって。そーゆうんじゃない」


「じゃあどーゆうのよ。何処に行ったの?」


本当に、容疑者の気分になってきた。こんな刑事がいたら、すぐに口を割りそうだ。


「ちょっと知り合いの所にね。2人きりじゃなかったし」


「え?他にも誰かいたの?男?」


マズイ。余計な事言ったか。シャツのボタンを留め、袖を肘まで捲る。「とにかく!知り合いで、用事があって、出掛けただけ!以上!」


「付き合う可能性はないわけ?」


続くか・・・勘弁してくれ。「だから、そんなんじゃないって。しかもあの人オネエだし。春香も聞いてたでしょ」


春香が人差し指をわたしに向けた。「そこよ。なんで、あんな喋り方なのかしら?」


「なんでって、オネエだからじゃ」


「同性愛者ってこと?」


「・・・や、わかんないけど」


「違うわよ。アレはゲイじゃない」


「えっ、そーなの?」


「絶対ノーマルよ。言ったでしょ、兄貴がゲイだからわかるって」


そういえば、そんな話してたっけ。追及出来ないし、する気もないが。「なんでわかるの?」


春香は身体から気でも放つような手振りをした。「こう、全身から滲み出るのよ。特有のモノが。上手く説明出来ないけど」


「うん、全然わかんない」


「とにかく、ゲイじゃないのは間違いないわ。だぁ〜かぁ〜らぁ〜」猫撫で声が発動し、わたしの腕に抱きつく。「紹介し・て」


「・・・この前したけど」


「もお〜、そーゆう意味じゃないでしょ?」頬をツンと突かれる。若干強めだ。


「だ─っ!離せ!知らないよそんなの!・・・彼女いるかもしれないし」


「じゃあ聞いてみて」


「誰が?」


「アンタ以外、誰がいるのよ」


「・・・無理!」


「なんでよ」


「なんでって・・・どう聞いていいか、わかんないし」


「日本語喋れる?」


「この会話は何語だ」


「ふーん・・・」


春香がわたしの顔をジーッと観察する。「なに」


「いや?その人の事、好きなのかなーって」


理解するのに、1分はかかったと思う。「はあ・・・?わたしが、早坂さんを?」


「紹介を渋るってことはそうなんじゃない?嫌そうな顔してるわよ?」


思わず、棚に置いてある鏡で自分の顔を確かめる。──うん、普通だ。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る