その男、財前 龍慈郎13


「気になる?」3人で車に向かう途中、早坂さんが言った。


「えっ?いや・・・」意味もなく、何度も振り返っているからだ。「なんかこう、不思議な気分なんですよね・・・」


「フフ、わかるわよ」本当か?と思ったけど、言わない。「あたしも最初会った時、そうだったもの。そうねえ、言葉で表せない、不思議な感覚よね」


早坂さんも、そうだったんだ。「瀬野さんは・・・?そういうの、ありました?」


少し、間が空く。「不思議な感覚か。まあ、わからなくもないな」


それを聞いて、少し安心する。わたしだけじゃなかったんだ。


「ちょっと雪音ちゃん、どこ行くつもり?」


車のドアに向かうわたしに、早坂さんが言った。「え・・・車に乗ろうかと」


「アナタは前でしょう!」


「え、いや、瀬野さん乗ってください。わたし後ろに乗るんで」


「やめてちょうだい!何が悲しくて男を隣に乗せなきゃならないのよ。それもこんな図体デカいの」


「それはお前も同じだがな。中条、前に乗れ。後ろが静かでいい」


「はあ・・・」



車を走らせてすぐ、猛烈な睡魔に襲われた。車内に流れる洋楽のバラードと、時々フワッと香る芳香剤の匂いが、リラックス効果を増大させる。


「雪音ちゃん、寝ていいわよ。今日は疲れたでしょ」


「大丈夫、眠くないです」とは言いつつ、シートにしっかりともたれ掛かる。


「いいから寝なさい。家に着いたら起こしてあげるから」


「・・・早坂さんが言ってた、時間は関係ないって、寝ないからってことだったんですね」


「ああ、財前さん?そうよ」


「生まれてから、ずっと寝てないってことですよね」


「そうね」


「・・・ていうか、財前さんて何歳なんですか?」


「んー、あたしらもそこは詳しく知らないんだけど、100年は生きてるわね」


「ひゃっ!?」思わず身体を起こす。「100年、ですか・・・」


「最初に会った時点で100を超えてたからな。実際はもっと行ってるんじゃないか」と、後ろの瀬野さん。


「若いと思ったら急に年取ってたり、不思議な人だ・・・」


「どうして、聞かなかったの?」


「何をですか?」

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